ワークシェアリングって一体何?ワークシェアリングのメリットやデメリットを徹底解説!
ワークシェアリングとは雇用を維持するための手段です。あのトヨタも経営難に陥った際は活用しました。この記事では「ワークシェアリングって一体何?ワークシェアリングのメリットやデメリットを徹底解説!」ということを解説しています。
目次
ワークシェアリングの意味って?
世界をまたにかけるトヨタ自動車も、ワークシェアリングを導入した実績があります。
ワークシェアリングの意味は、そのままの意味で雇用を分け合うという意味です。
一人当たりの労働時間を短くすることで、社会全体での雇用や労働人口を増やすといった目的があります。
「ワーク」の意味は作業や仕事。
「シェアリング」の意味は共有する、分け合うといった意味です。
欧州で失業者が増えたため、ワークシェアリングという雇用形態に注目が集まりました。
一人当たりの仕事や労働時間を減らし、代わりに雇用を増やす。
「給料が減れば、労働者から不満の声が出るのでは?」と思われるかもしれませんが、失業率の高い状況では喜ばれる政策です。
たとえば、世界恐慌など就職難の状況でのワークシェアリングは「リストラされなくてよかった。給料は下がったけど…」となるからです。
雇用維持の目的で登場し、労働時間を減らすワークシェアリング。
日本でも働き過ぎによる過労死などが原因で、「労働時間を減らして雇用を増やそう!」という動きがみられます。
ワークシェアリングを会社で実施するメリット
ワークシェアリング導入によって「仕事量が減った」「雇用が増えた」「労働時間が減った」ということが起こります。
そうなると「ストレスが減った」「給料が減った」というようなメリットとデメリットが出てきます。
ワークシェアリングを実施した場合のメリットを、会社側の目線でみていきたいと思います。
ワークシェアリングを会社で実施するメリット①スピーディな対応が可能
ワークシェアリングを導入していると不測の事態であっても、スピーディな対応が可能になります。
たとえばマスクの生産ライン。
新型コロナの影響でマスクの需要が急激に上がりました。
通常500円のマスクが、ネットで3,000円の値がつくほどに。
こうした事態では、マスク関連会社は急いでマスクを作ります。
忙しいので人手がほしいところです。
もしワークシェアリングを導入していれば、急遽人材が必要な場合でも対応できます。
というのも、一人当たりの労働時間を抑えて雇用者を増やしている状態なので、一人当たりの労働時間を増やせばいいからです。
予想できない事態であっても迅速に対処できる、というのがワークシェアリングの強みです。
ワークシェアリングを会社で実施するメリット②コスト削減
会社の経営者が常に考えていること。
それが「どうにかして支出を減らしたい」という悩み。
会社経営の支出で、大きな割合を占めるのが人件費です。
残業や休日出勤で会社経営していたのであれば、ワークシェアリングによって、今まで支払っていた残業代や休日出勤手当が不要になります。
雇用を維持しつつ人件費を減らすことができます。
残業代や休日出勤手当は割増なので、この効果は絶大ではないでしょうか。
ワークシェアリングを会社で実施するメリット③生産性の向上
残業や休日出勤がなくなると、コスト削減以外にも効果が表れます。
それが生産性と結びつきます。
趣味や家族の時間が増えてリフレッシュできるので心に余裕ができます。
心に余裕があると、より仕事に専念でき生産性が高まります。
また「時間内に終わらせなければ!」という意識が芽生え、作業の効率化を見直す動きが出てくるかもしれません。
ワークシェアリングを会社で実施するメリット④従業員のモチベーション
従業員のモチベーションが上がります。
前述したように「家族と過ごす時間が増える」「趣味に使える時間ができた」など自由な時間が増えるからです。
また不景気へのリスクヘッジとして、雇用の安心感を与えることができるからです。
「不景気になるとリストラされるかも…。」と思って働く従業員と「不景気でも会社が守ってくれる!」と思って働く従業員。
どちらが頑張れるでしょうか?
自由な時間とリストラされない安心感から、従業員が仕事に打ち込めます。
ワークシェアリングを会社で実施するメリット⑤企業イメージ
会社経営では、イメージ戦略が鍵です。
イメージで商品が売れるからです。
たとえばシャンプーのCM。
「香りも甘みのあるフルーティーな感じで爽やかな気分になります。」でお馴染みのガッキーこと新垣結衣さん。
誰が宣伝しても売上が変わらないのであれば、わざわざ高い出演料を払わないはず。
印象というのは多大な影響力を持っています。
「労働者を大切にしている会社」と「労働者を大切にしていない会社」。
もし商品を購入するとしたら、あなたならどっちの会社を選びますか?
ワークシェアリングの実施による問題点
ワークシェアリングの実施による問題点を考えてみます。
ワークシェアリングの実施による問題点①給与計算の手間がかかる
新しい雇用形態を採用すると、給与計算の仕組みも変わります。
給与計算は雇用形態によって変わり、従業員一人ひとりの社会保険料も違います。
給与は従業員にとって最も大切なものなので、期間厳守は絶対です。
「給与明細もうちょっと待って」とか「今月の給料の振込が遅れる」なんて会社は信用できませんよね。
ワークシェアリング実施時は、給与計算も変わるということを覚えておきましょう。
ワークシェアリングの実施による問題点②従業員の格差が生じる
ワークシェアリングを実施しると、給料の格差が生じます。
ワークシェアリングを実施している部署と実施していない部署がある場合、ワークシェアリング実施部署だけが労働時間が少なくなるため、支給される給料に格差が生まれる、といった問題が起こります。
そうなると「なんであっちの部署だけ」と会社内で亀裂が生じます。
成果を上げている会社ほどまとまっているので、会社の揉め事でまとまれないのは避けたい事態です。
ワークシェアリングの実施による問題点③新制度の創設
新制度を創設する必要があります。
労働時間を減らし新規雇用を増やすだけでは、ワークシェアリングは上手くいかないからです。
たとえば、ワークシェアリングを実施前と比較して、給料がガクッと減額するようであれば格差是正の対策を講じなければいけません。
政府が法律を変えるとき国民に反発されるように、会社が従来のやり方を変えると従業員の反発心が芽生えます。
そうならないためにも新制度により、従業員の不満を取り除く対策をとりましょう。
ワークシェアリングの実施による問題点④コスト増加
残業代や休日出勤手当のコストは減る一方で、労働者が増えると社会保険料が増えます。
福利厚生費をはじめ研修費、出産祝い金など各種人件費が増えます。
ワークシェアリングによって増えるコストと減るコストを認識したうえで、導入したほうが賢明です。
ワークシェアリングの4つのタイプ
ワークシェアリングを実施するタイミングはいつなのか?
4つのシチュエーションを紹介します。
ワークシェアリングの4つのタイプ①緊急避難型
経営が傾いたときに行うワークシェアリングが緊急避難型。
会社のスキャンダルや不況により業績が悪化した場合、会社の収入が激減します。
そうなると支出を抑えるため従業員を解雇する場合がありますが、できることなら貴重な人材を手放したくありません。
緊急避難型のワークシェアリングでは、従業員の労働時間と給料を削減することで、解雇することなく業績の改善を目指します。
ワークシェアリングの4つのタイプ②中高年対策型
定年後の労働者を雇用したいときに行うワークシェアリングが中高年対策型。
中高年に働きやすい労働環境を目指します。
労働時間の短縮、雇用を増やし一人当たりの仕事量をセーブします。
たとえば、1日当たり3時間の短時間労働、週休4日など少ない労働日数などです。
働きやすい労働環境を提供することで、定年後の労働者であっても労働力とすることができます。
ワークシェアリングの4つのタイプ③多用就業促進型
「育児しているから」「介護しているから」という理由で、フルタイムで働けない労働者がいます。
「働きたいけど長期勤務は無理」といったニーズに応えるワークシェアリングが多用就業促進型。
多用就業促進型には、さまざまな働き方があります。
たとえば、好きな時間に出社OKなフレックスタイムや家で作業する在宅ワークなどです。
多様な就業形態により、従来の働き方では労働できなかった人材を採用できます。
ワークシェアリングの4つのタイプ④雇用創出型
多くの労働者を雇用したいときのワークシェアリングが雇用創出型です。
すでに働いている従業員の仕事を減らし、新規採用者に振り分けて雇用を増やします。
失業者が減るので社会貢献となり、なおかつ増員が必要な事態に対処できるというメリットがあります。
ワークシェアリングの導入方法
ワークシェアリングの導入方法を紹介します。
ワークシェアリングの導入方法①現状の把握
ワークシェアリングの導入方法のひとつめは、現状の把握です。
作業ごとに必要な人数を確認します。
それから、どのような方法でどれくらいの時間必要なのかといった客観的データを集めます。
現状の把握ができたら、次は作業の見直しです
ワークシェアリングの導入方法②作業の見直し
ワークシェアリングの導入方法のふたつめは、作業の見直しです。
現状を分析して、不要な作業、無駄な業務を洗い出しましょう。
改めて探してみると、「今までの習慣でやってたけど…実は意味ない」というような不要な作業がでてきます。
不要な作業を見直して、本当に必要な作業だけを見つけ作業の効率化を目指しましょう。
ワークシェアリングの導入方法③ワークシェアリングに適した業務の洗い出し
ワークシェアリングに適した業務の洗い出しを行いましょう。
マネジメントなどワークシェアリング導入にあたり準備します。
会社のビジョンを共有できていれば、新入社員に作業を教える際、スムーズに教育することができます。
ワークシェアリングの導入方法④マニュアル作成
マニュアル作成を作成します。
どういう手順で仕事を教えるのか、作業のポイントや注意点がわかるマニュアルが望ましいです。
ワークシェアリング導入に向けて、徹底したマニュアルが作成できているのといないのとでは、導入時の混乱の度合いが全然違います。
ワークシェアリングの導入方法⑤進歩状況&評価
忘れてはいけないのが、進歩状況を確認して評価することです。
目的達成状況や業績への影響をチェックし課題を解決していく必要があります。
その際PDCAが役立ちます。
PDCAとはPlan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善)のことで、業務の最適化や効率化を行うことができます。
ワークシェアリングの事例
ワークシェアリングには多くの事例がありますが、いくつかを紹介したいと思います。
ワークシェアリングの事例①オランダ
ワッセナー合意を受けてワークシェアリングを推進したオランダ。
雇用創出型のワークシェアリングで雇用を短時間にすることで雇用を増やしました。
賃金抑制に対し労働組合が反発したり、企業が短時間の雇用創出や雇用確保に力を入れたりして推し進めた政策です。
政府の減税政策も相まって、失業率が大幅に改善されたことで知られています。
ワークシェアリングの事例②トヨタ
世界のトヨタでもワークシェアリングの事例があります。
アメリカにあるトヨタの工場で労働時間と賃金を削減しました。
トヨタの業績が悪化し雇用を維持するための苦肉の策です。
トヨタは下記のような対策を行いました。
・ボーナスの削減
・賃上げの先送り
・給料減額
・早期退職希望者の呼びかけ
もし日本経済が落ち込めば、日本のトヨタでも導入されるかもしれませんね。
ワークシェアリングまとめ
ワークシェアリングについて網羅的に説明しましたが、いかがでしたか。
労働者からすれば、雇用が増えるのは嬉しいけど給料が減るのは勘弁、といったところでしょうか。
労働者のニーズを満たしたワークシェアリングは喜ばれるので、導入時は労働者のニーズと経営状況、メリット、デメリットを考慮してみてください。
この記事のライター
松田佳祐
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