終身雇用制度が崩壊する?企業や個人への影響とは?
なぜ終身雇用の崩壊が囁かれているのか。公務員はリストラしないと言われていますが、1つの職場で定年まで働き続けるという働き方は終わったのかもしれません。この記事では終身雇用制度の崩壊について解説しています。公務員でない方必見です。
目次
終身雇用制度が崩壊する?
新卒で入社して定年まで働き続けることが前提だった終身雇用制度。
2019年、経団連会長とトヨタ自動車社長が「終身雇用は難しい」という発言をしました。
ひと昔前は、大量の労働者を雇い多くの労働時間を費やして大量生産していましたが、今日では従来のやり方では立ち行かなくなりました。
なぜなのか?いつからなのか?
過去20年のデータを見てみると、世界の主要な大企業はガラッと入れ替わりました。
なぜあれだけ経済成長してきた日本が成長できなくなってしまったのか。
それは物が普及しきったからです。
しかも海外のほうが人件費が安く、大量生産方式のモノづくりでは経済成長できないフェーズへと突入したからです。
IT革命、AI技術、ビジネスモデルの変化。
明治維新は黒船の脅威に対抗するため、刀を捨てました。
Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字をとったGAFA。
GAFAに対抗するため、終身雇用や年功序列といった制度を捨てなければいけないのかもしれません。
終身雇用制度とは
会社が正社員として採用した場合、定年まで雇い続けるという日本独自の雇用形態が終身雇用制度です。
企業は従業員を定着させることができる、従業員は安定した生活を手に入れられるという両者にメリットがあったので、多くの企業が採用されてきました。
終身雇用制度は日本の雇用制度の1つで、他には勤続年数によって賃金や評価が上がる年功序列制度があります。
ところが世の中の変化や人件費の増大により、ゆくゆくは終身雇用制度の終わりが来ると言われています。
終身雇用制度は法律で決まっておらず雇用慣行です。
そのため経団連会長やトヨタ自動車社長が終身雇用制度をやめたとしても問題ありません。
終身雇用制度を導入した松下幸之助さん
いつから終身雇用が始まったのか。
始めて終身雇用制度を導入したとされる、現在はパナソニックとして有名な旧松下電器の創業者である松下幸之助さん。
1929年の世界恐慌で解雇の不安が高まっていたところ、松下幸之助さんは「従業員は一人も減らさない」と経営がピンチでも雇用を維持し、従業員と世間から信頼を得たそうです。
その後第二次世界大戦以降、労働争議が日本全国で起き、企業は労働者の信頼回復のため終身雇用制度を導入しました。
経営の神様である松下幸之助が始めた終身雇用制度は、高度経済成長とともに各企業へと浸透し現在に至っています。
週休二日制を取り入れたのも松下幸之助さんで、労働者の働き方に大きく影響を与えた人物と言っても過言ではありません。
終身雇用制度のメリットとデメリット
終身雇用制度のメリットとデメリットを考えていきたいと思います。
公務員であればリストラしないと言われていますが、とはいえ郵政民営化など変化がないとは言い切れません。
終身雇用制度のメリットとデメリット①労働者のメリット
労働者視点でみた終身雇用制度のメリットは、定年まで安定した収入を得られるという点です。
精神的にも経済的にも不安材料がなくなり安心感があります。
しかも収入に対して信用があるため、住宅ローンなど銀行でローンを組むことも容易にできます。
終身雇用制度のメリットとデメリット②企業のメリット
企業の立場から終身雇用制度のメリットをみていきます。
長期的な視点で人材育成への投資が行いやすい、というメリットがあります。
社員を教育することで、自社好みのカラーに染めることができ、従業員を企業の資産とすることができます。
安定した収入があると従業員が心理的に安心できるため、従業員の意欲が向上し生産性が上がります。
離職率が低いので、教育や採用のコストがかかりません。
もし離職率が高く頻繁に採用面接を行う企業は、採用のための人件費や時間といったコストが発生します。
終身雇用制度のメリットとデメリット③企業のデメリット
終身雇用制度が従業員に安定をもたらすメリットがあると前述しましたが、それは企業にとってはデメリットです。
なぜデメリットになるのか。
それは安心によって頑張らなくなるからです。
職を失わないので、サボったり努力しなくなります。
いつからか努力しなくなりました。
また2050年には3人に1人が65歳以上です。
従業員の高齢化によって生産性が落ちて経営が悪化したとしても、簡単に解雇できないという問題があります。
余剰人員や時代に合っていない技術者を抱えるリスクがあります。
終身雇用制度の崩壊が企業に与える影響とは?
終身雇用制度の崩壊が企業に与える影響について考えていきます。
リストラしない公務員であっても、転職が当たり前の世の中であればどうなるかわかりません。
終身雇用制度の崩壊によるメリット
終身雇用制度の崩壊により、支出が減ります。
会計において人件費は、大きな割合を占める支出です。
しかも固定費です。
人件費が流動的になると、支出を操作できます。
「人件費が流動的になる」と言われてもイメージが湧きにくいかもしれませんが、たとえば新しいシステムを作成するときは、多くのエンジニアが必要です。
ですが、完成後は少数のエンジニアで運営できるため、正社員として雇用したくありません。
そんなとき、SES契約で流動的な人材を雇う企業が増えています。
経済産業省が公表したデータでは、2030年には約80万人ものエンジニアが不足するとのこと。
必要なときに必要な人材だけ雇う、流動的な雇用がメインになる未来がくるかもしれません。
終身雇用制度の崩壊によるデメリット
今までと同じやり方では人材確保できないというデメリットがあります。
なぜ人材確保できないのか。
今までは終身雇用制度があったので、倒産しない会社が魅力的でした。
ですが終身雇用してもらえないのであれば、会社が倒産しようがしまいが関係ありません。
潰れない安定した会社というだけでは、志望動機になりません。
さらに今まで育ててきた従業員が減るというデメリットがあります。
新しいスキルを求めて転職する人が増えるからです。
終身雇用制度が崩壊すると今までのやり方では、人材確保&維持が難しいです。
終身雇用制度の崩壊で企業の採用・人材戦略はどう変わる?
経歴よりスキルが重視されるようになります。
現に大企業が1000万円で新卒採用しています。
たとえば、くら寿司やNEC、SONYなどが行っています。
これからはスキルが重視されるので「自社で働くと○○のスキルが習得できる」というメリットを提示して採用募集する傾向が、強くなると思われます。
終身雇用制度の崩壊が社会に及ぼす影響と今後のキャリア戦略
会社ではなく、仕事で就職先を選ぶ労働者が増えます。
終身雇用が崩壊した世界で労働者が考えていることは「どの会社に就職するか」ではなく「どの会社がスキルアップできそうか」です。
もし職を失ってもスキルがあれば、再就職できるからです。
海外では転職を繰り返してステップアップする人も多数いるほどです。
AI技術の向上により単純作業はロボットがやるようになります。
たとえばAmazon Go。
レジ打ちの仕事はもうすでになくなりかけています。
簡単なデータ入力もなくなりそうです。
終身雇用の崩壊後は、労働者の仕事選びの動機が変化します。
終身雇用制度の崩壊まとめ
経団連会長とトヨタ自動車社長の発言は、終身雇用崩壊が噂されていたまさにその時でした。
Yahoo!のトップニュースにもなっていた経団連会長とトヨタ自動車社長の発言ですが、大企業のトップが言うと説得力があります。
いつからなのかはわかりませんが、データ入力などの単純作業は人間に変わってロボットが代替するようになるとも言われています。
ラッダイト運動のようにまた機械を壊すのか、それとも手に職をつけるのか。
可能ならリストラのない世の中であってほしいですが。
この記事のライター
松田佳祐
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