知らないとダメ!労使協定の内容と届出の義務
労使協定結んでいますか? 本来であれば長時間の時間外労働や給与や賞与の天引きと行った、労働基準法違反の労働であっても労使協定を結ぶことである程度まで免罰化されます。 労使協定を結ばないまま違反すると罰則もあり得るので注意してください。
労使協定とは?
労使協定とは労働者(基本的に労働者代表者)と会社との間でかわされたルールを書面化した協定を指し、「36協定(くわしくは後述)」や「賃金控除に関する労使協定」「フレックスタイム制に関する労使協定」などの多くのものがあります。
正規の手続き・方式を踏んだ協定によって、本来なら労働基準法違反になる労働条件・労働実態であっても免罰化することができます。
そのためには、労働者と会社の間で協定を結ぶことが大前提で労働基準監督署に届出書を提出しなければならないものもあります。
労使協定締結の手続き・方式とは?
労使協定では会社と労働者が互いの合意の上で締結する必要がありますが、どういった手続き・方式を踏まえる必要があるのでしょうか?
労働者代表に就任できない管理監督者
会社と労働者が協定を結ぼうにも、全従業員と交渉や調整をするのは難航しますので、基本的には労働者の中から代表者を選び、労働者代表者として会社側との交渉や窓口になる方式がとられることが多いです。
しかし、その代表者を会社が指名したり、会社からの影響力が強い人物が選ばれると形骸化する恐れがあるため、労働者代表者になれる人物は制限されています。
労働者代表者になれないのは、労働基準法において「管理監督者」ではないことが条件になっており、「管理監督者」とは部長や工場長などの労働条件の管理などについて経営者と一体的な立場の人間を指します。
労働者代表者の選び方
労働者代表者を選ぶ方法としては、挙手や投票などの何らかの民主的な手続き・方式がとられ、労働者の過半数からの支持がなければなりません。
なお、以下に該当する場合は労使協定事態が無効になるので注意してください。
- 会社が一方的に労働者代表者を指名した場合
- 親睦会などの幹事が自動的に就任する場合
- 特定の役職者が自動的に就任する場合
- 一定範囲の役職者の間で互選がされている場合
労働者代表者を選ぶ権利は以下の立場の人達も含まれており、全事業場の労働者のうち過半数の支持がされなければなりません。
- 管理監督者
- 正規労働者
- 非正規労働者
- 病気欠勤者
- 介護休業もしくは育児休業取得者
- 年少者
- 派遣元企業における派遣労働者*派遣先においては含まれない
労使協定の締結及び必要に応じて労働基準監督署に届け出
最後に労働基準監督署に明文化された労使協定書を提出しなければならない労使協定もあるので、必要なら届出書を提出してください。
届出が義務化されているにも関わらず、届出書が提出されていない場合は無効となります。
労使協定の種類と内容
労使協定にはさまざまなものがあり、労働基準監督署に届出書が必要な場合もありますので注意してください。
労働基準監督署に届出書が必要な労使協定
- 1年単位の変形労働時間制に関する労使協定
- 1ヶ月単位の変形労働時間制に関する労使協定
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する労使協定
- 時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)
- 事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定
- 専門業務型裁量労働制に関する労使協定
- 貯蓄金管理に関する労使協定
労働基準監督署に届出書が必要な労使協定の中では最も有名な「時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)」についてくわしくみていきます。
労働基準法によると法定労働時間(原則1日8時間、集40時間)を超える労働は認められていませんが、36協定を結び、労働基準監督署に届出書を提出することで労働時間をある程度延ばすことができます。
しかし、労働時間を延ばすのも限界があるので注意してください。
労働基準監督署に届出書が不要な労使協定
- 賃金控除に関する労使協定
- フレックスタイム制に関する労使協定
- 一斉休憩付与の除外に関する労使協定
- 年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定
- 年次有給休暇の賃金に関する労使協定
- 育児休暇及び介護休業ができない者の範囲に関する労使協定
- 看護休暇適用除外者に関する労使協定
- 継続雇用制度に関する労使協定
給与明細や賞与明細をチェックすると所得税や共済掛金が天引きされていることがあると思います。
給与や賞与はを含めた賃金は全額払が原則ですが、法令で定められている所得税等は天引きされることが認められています。
しかし、共済掛金などの法令で定められていないものに関しては賃金控除に関する労使協定を結ばなければ、給与・賞与からの天引きは認められていませんのでご注意ください。
労使協定の罰則
労働基準法や36協定をはじめとする各種労使協定が守られているかチェックするために、労働基準監督署の職員が確認することがあります。
このとき、36協定に違反していた場合でも、罰則を受ける場合があるので注意してください。
違反に該当するのは、「時間外労働」や「休日労働」に対してだけでなく、「届け出義務違反」や「有害業務時間外労働」といったものがあります。
労使協定の罰則①時間外労働及び休日労働違反
はじめて発覚した場合は注意だけで住む場合も多いそうですが、常態化しているなどの改善が見られなかったり悪質な場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に科される可能性があります。
労使協定の罰則②届け出義務違反
労働者と会社で締結した労使協定のうち、労働基準監督署に届出書の提出が義務付けられているものを提出せずに、法定労働時間などの違反があった場合は労働基準法の32条及び35条違反に該当します。
こちらも同じく6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の可能性があります。
労使協定の罰則③有害業務時間外労働違反
特定の業務のなかには防毒マスクや専用の保護メガネ、騒音を低減するための耳栓を使用しなければならないようなものがあり、そういった業務は1日2時間以下に制限されています。
もしもこの2時間を超えて労働をした場合、罰則を受ける可能性があります。
労使協定の罰則対象者は会社や上司
労使協定違反の罰則を受けるのは、労働者を監督しなければならない会社や上司です。
よって、労働者を管理する上司は自分を守るためにも部下の労働時間を把握・制限していく必要があります。
もしも会社が労使協定違反を黙認していた場合、会社にも同じように罰則を課される場合があります。
労働者が残業手当や休日労働手当欲しさにわざと時間外労働をすることも考えられますので、上司や人事部といった会社側は労働者の労働時間を把握・監督しなければなりません。
労使協定のトラブル回避のために行うべきこと
こうした労使間のトラブルを未然に回避するためにも労使協定を労働者に周知させなければなりません。
周知の方法としては
- 常時各作業場の見やすい場所に掲示する
- 常時各作業場に備え付ける
- 書面を労働者に交付する
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずるものに記録して、かつ各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する
これらの方法のいずれかの方法になります。
なお、派遣労働者に対してはFAXもしくはメールによる送信、データベースに悪世する方法も認められることがあります。
もしも労働者に対して周知手続きを取らなかった場合、こちらも30万円以下の罰金が課される可能性があります。
労使協定まとめ
この記事では労使協定について解説してきましたが、一言で「労使協定」といってもさまざまなものがあり、細分化されているといえるでしょう。
労使協定に定められていないままの状況で、労働基準法を逸脱した労働や労働環境下で働かせると従業員を監督する立場の上司や会社に対して罰則も起こりえます。
知らなかったでは済みませんので注意してください。
この記事のライター
U11
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