意外と簡単!損益計算書(PL)の見方と注目すべきポイントを徹底解説
損益計算書と貸借対照表は、企業会計の基本中の基本です。簿記や会計を学んでいれば、それほど難しいというものではありません。見方さえ分かれば、損益計算書は意外と簡単です。初心者にもわかりやすく、損益計算書の見方と注目すべきポイントを徹底解説します。
損益計算書(PL)とは?
損益計算書とは、1会計期間に発生した収益と費用の総額を示して、損益計算を行い、当期純損益を計算したものです。
英語では、「Profit and Loss statement」となります。略して、「PL」とすることもあります。
損益計算書とすると難しい感じがしますが、収支計算書、収支内訳書というと、わかりやすいかもしれません。つまり、収入と支出、を収益と費用と読み替えるだけで、イメージしやすくなると思います。
私たちは、日常の生活において、損と得を計算しています。企業のビジネスの損と得つまり、費用と収益の比較が損益計算書です。
損益計算書(PL)の見方
収 益
売上高:主たる営業活動による収入、いわゆる年商
営業外収益:受取利息、受取配当金などの、主たる営業活動以外の活動による収入
特別利益:固定資産売却益、投資有価証券売却益などの、臨時的な事由による収入
費 用
売上原価:売上高に対応する、仕入れと製品の製造にかかる支出
販売費及び一般管理費:給与、広告費、荷造運賃、旅費交通費、水道光熱費、保険料、減価償却費などの、主たる営業活動のうち販売活動や管理等にかかる支出
営業外費用:支払利息などの、主たる営業活動以外の活動にかかる支出
特別損失:固定資産売却損などの、臨時的な事由によって生じた支出
法人税、住民税及び事業税:法人にかかる税金
初心者が会計は難しい、簿記は無理、となる最大の理由は、複式簿記にあります。取引の二面性というものです。一つの商取引を、二つの現象として、記帳する、という行為です。ここでは簡単に原因と結果と覚えておきましょう。
勘定式を見ると拒否反応が起きそうですが、これはとても理にかなった計算方法です。初心者は貸方、借方でまずつまずくと思いますが、実は筆者も理解していません。どうしても、貸し、借りという言葉の意味を考えてしまって、先に進めなくなるので、帳簿の右側と左側とだけ覚えておきましょう。
ごくごく単純な例として損益計算書を作成します。
現金で売上があった→現金増えた
現金で消耗品を買った→現金減った
これを仕分けします。
売上は、収益ですので、右側(貸方)に書きます。現金の増分は左側(借方)に書きます。消耗品費は、費用ですので、右側(貸方)に書きます。現金の減分をすぐに左側(借方)から差し引きたくなりますが、現金の減分は左側(借方)に書きます。現金の増分を左側(借方)、減分を右側(貸方)に書くのは、その方が便利だからです。最終的に増分と減分の差額を期首の現金に加算すれば、期末の現金になります。
損益計算書を作成すると以下のようになります。
仮に、自己資金50,000円でこのビジネスを始めたとすると、貸借対照表も作成できます。
損益計算書(PL)の見方のポイント
損益計算書は、通常、報告式の損益計算書が用いられます。
(イ)売上総利益……売上高から対応する売上原価を引いた利益。
よく言われる粗利はこの部分のことです。
(ロ)営業利益……売上総利益から、販売費及び一般管理費を引いた利益。
主たる営業活動から生じたもの。
(ハ)経常利益……営業利益から、営業活動以外の活動から発生した収益・費用を加減した利益。
通常の活動により生じたもの。
(ニ)税引前当期純利益……経常利益から、臨時的に発生した特別利益・損失を加減した利益。
(ホ)当期純利益……税引前当期純利益から法人税、住民税及び事業税を引いた利益。
全ての経営活動の結果。
損益計算書(PL)の見方のポイント①当期純利益
損益計算書の最も見るべきポイントは、当期純利益です。企業活動はこの当期純利益を出すためのものです。年商数千万円、年商1億円達成、と言っても、当期純利益が赤字では、企業活動の意味がないのです。
万が一、赤字なってしまったら、企業は、負債を抱えるか、資本を減らすか、しなくてはなりません。そうなると、企業活動は年々縮小し、経営は破綻してしまいます。
損益計算書(PL)の見方のポイント②利益率
利益率は、売上と利益の割合を示しています。利益は売上から費用を差し引いたものなので、売上と費用のバランスとも言えます。
売上高から売上原価を差し引いた粗利の割合を示した売上総利益率、営業利益の割合を示した営業利益率などがあります。
利益率が高いと、企業が高い付加価値を生んでいることになりますし、利益率が低いと、薄利多売となることを意味します。しかし、これは業種や経営方針によってまちまちですので、高ければ良い、低ければ悪いというものでもありません。
損益計算書を読み解くには、割合を見るのは、とても有効です。〇〇率が多いのはそのためです。
売上高から売上原価を差し引いた粗利の割合を示した売上総利益率、営業利益の割合を示した営業利益率などがあります。数字の大小だけに捉われない、合理的な経営判断ができます。
損益計算書の情報を元に次のアクションを考える
損益計算書は、企業活動の成績表ともいえます。成績表でオール5であれば問題ありあませんが、なかなかそういう企業はありません。
オール3の損益計算書を見て、良い悪いの判断はできません。もしかしたら、その企業がオール2の成績からオール3になったのであれば、その企業は成長している優良な企業ということです。また、オール4からオール3になったのであれば、経営改善しなければなりません。
損益計算書の情報から、経営分析を行うには、次の4つのパターンしかありません。
- 増収増益
- 増収減益
- 減収増益
- 減収減益
増収、つまり売上高の増加はの要因は、販売数量の増加、販売単価の上昇です。顧客数の増加、リピート購入の増加、営業力の強化、新商品の開発などがあげられます。
反対に減収、つまり売上高の減少の要因は、販売数量の減少、販売単価の低下、顧客数の減少、営業力の弱体化、競合の発生、商品の陳腐化、商品開発の遅れなどがあげられます。
減益の要因は、主に費用の増加によるものです。原価の増加、直接材料費の増加、外注費の増加などです。
販売費、及び一般管理費では、人件費の増加、その他固定費の増加があげられます。
増益の要因は、反対に、原価の減少、直接材料費の増加、外注費の増加などで、販売費、及び一般管理費では、人件費の減少、その他固定費の減少があげられます。
営業外の収益、費用、特別損失などが影響することもありますし、増税も減益の要因の一つです。
増収増益は、優良な企業です。過去の取り組みの成果です。
増収減益は、販売戦略は正しいです。費用を見直すことで赤字を改善できます。好景気でのパターンです。
減収増益は、販売は不味かったものの、費用の削減が成果を出した結果です。不景気で出ることがあります。
減収減益は、いわゆる赤字経営ですので、至急経営改善に取り組む必要があります。
損益計算書(PL)の見方まとめ
損益計算書の見方と注目すべきポイントを解説しました。損益計算書は企業の成績表です。年商だけで、その企業が優良かはわかりません。
ポイントさえ押さえてしまえば、初心者でも簡単だと思います。日常生活において、例えば何かの製品を購入するときに、損するか得するか判断していると思います。損益計算書は、その考えを書き下ろしたものだと言えます。損益計算書と言われると、難しい感じがしますが、意外と簡単なものです。
この記事のライター
sugahara michiaki
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