裁量労働制のメリットやデメリットは?実際の導入方法も詳しく解説!
「裁量労働制」とはどういった制度でしょうか? デメリットもありますが、上手く導入できたら残業代を減らしたりして大きな効果があります。 この記事では裁量労働制はなぜ残業を減らすことができるのかなどのメリット・デメリット、導入手順を解説していきます。
裁量労働制とはどんな制度?
昨今「裁量労働制」という言葉をよく聞くようになりませんか?
一方で、よくわからないという方が大半だと思います。
この記事では裁量労働制とは何かについて解説していきます。
そもそも「裁量労働制」とは、企業と労働者があらかじめ合意した労働時間で「働いたとみなす」制度のこと。
労働者が5時間しか働いていなくても、みなし労働時間が8時間なら8時間分の給与が発生します。
10時間働いた場合の残業代はケースバイケースですが、8時間のみなし労働時間であれば、8時間分の給与のみで残業代は出ません。
残業代は発生する?発生しない?残業時間は関係がない
みなし労働時間が8時間以下なら、8時間を超えても残業代は発生しません。
ただし、みなし労働時間が8時間を超えるのであれば、超えた分の残業代が発生します。
例えば、みなし労働時間が10時間なら、2時間分の残業代が発生します。
もちろん、残業代以外にも深夜労働や休日労働をした場合は、別途労働基準法に基づいた手当が発生します。
裁量労働制の対象となる職業・職種
裁量労働制はどんな企業でも導入できる制度ではありません。
業務を行う方法が従業員の裁量に委ねる必要がある仕事に限られ、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2つの制度に分けられます。
専門業務型裁量労働制とは
厚労省管轄の中央労働委員会によって、労働時間で給与を算出することが難しい次の19の業種だけが専門業務型裁量労働制を導入できます。
- 新商品・新技術の研究開発
- 情報処理システムの分析・設計
- 新聞・出版や放送番組の制作取材・編集
- ファッションデザイナー、インダストリアルデザイナー、グラフィックデザイナー
- 放送番組、映画などのプロデューサー、ディレクター
- コピーライター
- システムコンサルタント
- インテリアコーディネーター
- ゲームソフト作成者
- 証券アナリス、金融商品開発者
- 大学研究者、大学教授
- 公認会計士
- 弁護士
- 建築士
- 不動産鑑定士
- 弁理士
- 税理士
- 中小企業診断士
- 金融商品の開発
企画業務型裁量労働制とは
労働基準法で定められている企画立案や調査・分析などをはじめとするホワイトカラー職の人たちが対象になる裁量労働制です。
裁量労働制のメリット
裁量労働制のメリットとしては、業務効率化のインセンティブが働くことや残業代などを減らすことで人件費の調整がしやすく、調整が簡単になることが挙げられます。
裁量労働制のメリット①従業員の仕事効率化
従業員にとって、労働時間が短いほど労働時間あたりの給与を増やすことができるので、可能な限り早く仕事を終わらせようとするインセンティブが生まれます。
これによって効率化が図られるだけでなく、プライベートの時間とスキルアップのための時間にも回せるので、専門職の人にとって大きなメリットです。
裁量労働制のメリット②残業代などの手当が減り、人件費の調整が容易
原則的にみなし労働時間に応じた給与しか発生しないため、残業代などの追加の手当を減らし、必要な人件費の予測がしやすくなります。
よって、人件費の予算計画が正確なものに近づけることとができるので、人件費の調整が容易になります。
裁量労働制のメリット③人材の獲得と流出防止
能力に応じた柔軟な働き方ができるとあって、優秀な人材が集まりやすく、離職率の低下にもつながることから、人材の流出を減らすことができます。
裁量労働制のデメリット
裁量労働制にももちろん多くのデメリットがあります。
とくに、チームで業務にあたらなければならない場合、制度設計次第ですが、裁量労働制は不向きと言えるでしょう。
裁量労働制のデメリット①導入まで時間がかかる
裁量労働制を導入するにあたって、労働基準法に定められている手順を踏まなければなりません。
詳しくは後述しますが、労使協定や就業規則の変更にかなりの時間と労力がかかると覚悟してください。
裁量労働制のデメリット②従業員の勤怠状況の把握が困難
裁量労働制を導入すると、勤務の開始・終了時間を従業員各自で決めることができるといっても、深夜労働や休日労働をした場合は、手当が発生します。
そうした勤怠状況を把握することが難しくなるため、rakumoキンタイのような裁量労働制に対応した勤怠管理システムが必要になる場合があります。
裁量労働制のデメリット③チーム作業が困難
裁量労働制では従業員が各自で労働時間を決めるため、チームで仕事に取り組むときに仕事の調整が難しくなります。
しかし、労働時間を決めてしまうと裁量労働制を導入する意味がありません。
このように、裁量労働制は職場にあう制度に設計できると大きな効果発揮できると推測されますが、多くの課題があります。
裁量労働制の導入方法
専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制では導入の手順が異なるので、注意してください。
専門型裁量労働制の導入方法①必要な事項を定める
- 対象業務
- みなし労働時間
- 業務遂行の手段や時間配分などに関して労働者に具体的な指示をしないこと
- 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況の把握方法と把握した労働状況に応じて実施する健康と福祉を確保するための具体的内容
- 対象業務に従事する労働者からの苦情処理のために実施する具体的措置の内容
- 有効期限(3年以内が望ましい)
- 上記4、5に関して、把握した労働時間の状況と講じた健康と福祉確保措置および苦情処理措置の記録を協定の有効期間中および終了後3年間保存すること
- 時間外労働、休憩時間、休日労働、深夜業の取り扱いについて
専門型裁量労働制の導入方法②労使協定へ届け出る
以上の項目を定めた労使協定を労働基準監督署に届けて出ます。
企画業務型裁量労働制の導入方法①労使委員会での合意
まずは、「労使委員会」を設置します。
労使委員会とは労働者側と使用(雇用)側の双方から代表者を選出した組織。
労使委員会では以下の内容を協議して、4/5以上の合意を得なければなりません。
- 対象業務
- 対象労働者の範囲
- 1日あたりのみなし労働時間
- 対象労働者の健康と福祉を確保するための措置
- 対象労働者の苦情に関する処理の措置
- 労働者の同意を得なければならない旨とその手続、同意しない従業員に不利益な扱いをしないこと
企画業務型裁量労働制の導入方法②労働基準監督署に届け出後、個別の従業員との同意
労使委員会で4/5以上の同意を得たあと、労働基準監督署に届け出を出し、対象となる個別の従業員から同意を得ます。
企画業務型裁量労働制の運用方法
企画業務型裁量労働制を運用するにあたり、以下のことが必要です。
- 対象従業員の健康と福祉確保のための措置を実施する
- 対象従業員の苦情処理の措置を実施する
- 不同意労働者に不利益な扱いをしない
- 1の実施状況を定期的に労働基準監督署所長に報告する
裁量労働制のメリットデメリットや残業まとめ
裁量労働制では労使間であらかじめ合意し、手続きをすることでみなし労働時間に応じた給与が発生します。
注意してほしいのが、残業代が全く不要になるわけではなく、あらかじめ合意した8時間を超えるみなし労働時間の分は残業代が発生し、深夜労働や休日労働も労働基準方に基づいた手当が必要です。
導入できる仕事は限られていますが、上手く導入することができれば大きなメリットをもたらすでしょう。
この機会に検討してみてはどうでしょうか?
この記事のライター
U11
この記事へコメントしてみる
コメントは運営が確認後、承認されると掲載されます。