IPOとは?メリット・デメリットや上場を進行させる際の注意点についてまとめてみた
IPOとは具体的にどういったものかご存知でしょうか? 新規で上場させることを指し、多くのメリットもありますが、企業によっては上場を維持させるだけでも大きな負担になりかねません。 この記事ではIPOのデメリットとは何かを中心に解説していきます。
IPOとは
IPOとは「株式公開」とも呼ばれ、自社の株式を東証一部・二部やJASDAQ、マザーズなどの証券取引所に新規で上場させることをいいます。
これにより、資金調達が簡単になるなどのメリットがありますが、上場の準備や維持が大変だったりと多くのデメリット・問題も発生します。
メリットよりもデメリットが大きくなると、株式市場から撤退するケースも考えられますので、IPOを目指すのであれば、十分な情報収集を行い慎重に進めなければなりません。
この記事ではIPOのメリット以上にデメリット・問題を解説していきます。
IPOのメリットとは
まずはIPOを行うことで得られるメリットとはどういったものがあるのか紹介していきます。
IPOのメリットとは①株式市場からの資金調達がしやすくなる
企業が事業拡大や設備投資等の目的で資金調達をする場合、主に
- 金融機関からの融資
- 助成金・補助金の活用
- 売掛金の債権譲渡による現金化
- 投資家から投資を受ける
などの方法がありますので、選択肢としては少なくないと思います。
ただし、期待したほどの多額の資金を集めることは難しいと考えてください。
例えば、金融機関から借入をしたいと考えても、審査に通らないこともあります。
IPOによって株式市場で大量の新株を流通させ、世界中の投資家に購入してもらうことで広く資金調達ができるようになります。
仮に非公開会社のままでは株式を売却しようにも株主が限定されるため「事業拡大のために資金調達をする」という目的を果たすことは難しいままです。
IPOのメリットとは②知名度アップ
IPOによってテレビや雑誌などのメディアで取り上げられ、商品やサービス・企業自体の知名度が向上し、同業他社と比較しても売上を伸ばしやすくなります。
事業提携が有利になる、従業員がやる気になるだけでなく、上場企業で働くことを希望する新卒者や中途採用希望者が集まりやすくなるので、優秀な人材の確保が容易になるといったメリットもあります。
IPOのメリットとは③信用度が高まる
IPOを行い、上場を維持するためには監査法人や公認会計士の指導や監査を受け、内部管理体制の強化、コンプライアンス違反をしない経営の実現、決算の迅速化・適正化が求められます。
これらのことによって信用力が高まり、取引先からの信頼や金融機関からの融資、人材確保の面が有利になります。
IPOのデメリットとは
これらのメリットのために上場を目指す企業は多いですが、企業全体に占める上場企業はごく一部で、上場していない有名企業も多いです。
例えば
- サントリー
- アサヒ飲料
- ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
- JTB
- 大創産業(ダイソー)
- ヨドバシカメラ
- 小学館
- 朝日新聞
- 竹中工務店
これらの企業は上場できるだけのポテンシャルはあるものの、他の企業に比べてIPOによるメリットを得る必要性が低く、デメリットのほうが大きいと判断し上場していないと言われています。
つまり、大企業だからといって必ずしも上場する必要はなく、あくまでもメリットとデメリットを比較してIPOを行うか判断しなければなりません。
IPOのデメリットとは①証券取引所や監査法人からの監督を受ける
上場企業はコンプライアンスを遵守し健全な企業運営をなければならないため、証券取引所や監査法人といった第三者から監督を受けますが、問題があった場合は指摘され、修正していきます。
この対応によっては上場廃止にされることもありますし、監査法人の監査費用もバカにできません(くわしくは後述)。
IPOのデメリットとは②事務作業の増加
コンプライアンスを遵守するためにさまざまな社内業務が厳格化されます。
例えば、今まで曖昧に処理していた手続きも適切に行う必要がありますし、株主総会や配当の通知、株主優待の発送など上場を維持するには今まで以上に業務が増え、従業員を増やすと負担が大きくなります。
IPOのデメリットとは③買収の可能性が高まる
IPOによって株式が公開されると誰でも株式を購入できるので、一般の投資家だけでなく、敵対関係にある企業に自社株を多く購入されることもありますし、少数株主権を行使されたり、反社会的勢力や人物が株主になることも考えられます。
こうしたことを考えると、サントリーやUSJなどの資金力も知名度もある企業にとって、上場のメリットは小さく、むしろデメリットが大きいため、あえて上場しない理由もわかります。
上場を進行させる際の注意点
デメリットよりもメリットのほうが大きいと判断し、実際にIPOを進めようとしても企業にとって大きな負担になる事案がまだまだ問題があります。
上場を進行させる際の注意点①上場するには3年以上かかる
上場するためには2年間の監査期間が求められていますが、実際は書類の作成や監査対策などもあり、どんなに早くても3年以上の準備が必要です。
社内体制の強化・整備だけでなく、時間をかけながら証券会社や監査法人の指導を受け、「申請直前2期間分の監査証明」をはじめとするさまざまな書類を提出しなければなりません
上場を進行させる際の注意点②作成・提出しなければならない書類が多い
上場させる取引所によって異なりますが、必要な書類にはさまざまなものがあります。
日本取引所グループのHPにある各取引所で求められる上場に必要な書類をまとめているページへのリンクを貼っておきますのでご確認ください。
これでは最低でも3年以上の準備が必要なのも納得です。
できるだけスムーズに上場を果たすためにも、上場予定の取引所はどういった書類が必要で、どの程度の準備期間が必要なのか計画を立てなければなりません。
上場を進行させる際の注意点③監査法人に支払うコストが高い
- 監査費用として800万円~2,000万円
- 株式事務代行手数料として400万円
- 主幹事証券会社成功報酬として500万円
- コンサルティング費用として400万円~800万円
企業や監査法人によって金額が前後しますが、上場するなら5千万円を監査法人に支払うと覚悟してください。
覚えておいてほしいのが、これらの費用は上場したときだけでなく、上場している限り毎年支払うということです。
つまりそれだけ売上を維持拡大していくことになり、企業にとって大きな負担になりえます。
上場を進行させる際の注意点④取引所に上場させるための費用も高い
取引所に上場させるための審査や新規上場料、公募もしくは売出しにかかるさまざま費用や年間上場料などが高いです。
例えば上場一部では上場審査料として400万円、新規上場で1,500万円、その他諸々の費用がかなり高いです。
これは日本国内の取引所の中でもハードルが高い東証一部だからこその費用とも言えますが、他の取引所も十分高額です。
IPOとはまとめ
IPOとは新規に東証一部二部やマザーズなどの証券取引所に上場させることをいいます。
これによって、株式を公開する以前と比較して資金調達がしやすくなったり、メディアに取り上げられて知名度が向上するなどのメリットがあります。
しかし、それ以上に上場の準備のためにかなりの時間と金銭的・業務的な負担があり、それが上場後にも続きます。
だからこそ、社会的な信用が得られると考えることもできますが、企業によってはメリットよりもデメリットのほうが大きくなる可能性もあるため、専門家と相談しながら慎重にIPOの検討をしていかなければなりません
この記事のライター
U11
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