今更聞けない多角化企業の意味とは?多角化の特徴や成功事例を徹底解説!
成功すると企業経営の安定化と効率を図ることができる「多角化戦略」。 この記事ではSONYやセブンイレブンなどの成功企業の事例を交えて成長戦略と多角化戦略の基礎知識を解説していきます。 時代の変化が早くなった現代だからこそ読んでいただきたい記事です。
多角化企業って?
今日のビジネス環境は20年前30年前と比べてみても段違いに変化のスピードが早くなりました。
具体的に言うと、インターネットなどのデジタル技術が向上・普及し、数年で市場が変化することも珍しくありません。
その変化についていったり対応できなければ、企業は倒産したり業績が悪化したりしますが、一つの解決策として「多角化」があります。
「多角化」とは主力製品・サービスなどの本業とは別の業界や分野に進出することで市場変化に対応しやすくなります。
他分野・他業界に進出した企業を「多角化企業」といい、セブンイレブンやSONYなどが有名です。
この記事ではセブンイレブンやSONYの事例を交えながらも、企業の成長戦略や多角化戦略を一覧にして解説していきます。
多角化の4つの柱
経営者であり経営学者でもあったイゴール・アンゾフは企業の成長戦略を「製品」と「市場」の状況に分けて、以下の一覧形式にした「成長マトリックス」を提唱しました。
アンゾフの成長マトリックスは理想的なフレームワークと評価されています。
既存製品 | 新製品 | |
既存市場 | 市場浸透戦略 | 製品開発戦略 |
新市場 | 市場開拓戦略 | 多角化戦略 |
多角化の4つの柱①市場浸透戦略
一覧表をチェックするとわかるように、市場浸透戦略では既存市場に既存製品をさらに投入・販売することで、購入数量と購入頻度を高めて売上とシェアの拡大を目指します。
市場がすでに成熟しており、類似した競合製品が存在するので、どのようにして自分たちの製品に対する購入額と購入頻度を高めることができるかが課題です。
方法としては、生産コストを低く抑え、割引や顧客管理の強化、広告宣伝などによるブランド力を高めることで課題解決できると言われています。
多角化の4つの柱②市場開拓戦略
既存の製品を新しい市場に投入します。
「新しい市場」とは価値観が異なる場所や収入、年齢、性別、生活習慣といったカテゴリーが従来と異なる市場を指します。
海外展開や女性向け製品を男性向けの製品にしたり、高級向けの製品を大衆向けにするなど、ターゲットを変更して販売します。
ターゲットが変更になるので、消費者のニーズが合致せず、ターゲットに合わせた製品を開発しなければならないことがありますが、成功すると売上増加やさらに大量生産によるスケールメリットによるコストダウンが実現します。
営業販売や広告宣伝、顧客管理が重要と言われています。
多角化の4つの柱③製品開発戦略
既存市場に新製品を投入する戦略です。
「製品のカテゴリーを広げる」「製品アイテムの奥行きを伸ばす」ことで消費者のニーズを掘り出し、差別化することで売上増加を狙います。
そのためにもまずは、十分な市場調査を行い、それに合致した製品開発やプロモーションが必要です。
多角化の4つの柱④市場浸透戦略
今まで認知されていなかった市場に新製品を投入する戦略です。
新しい市場に参入するので、十分な市場調査やマーケティングだけでなく、新製品の開発もしなれけばなりません。
成功すると利益は大きいですが、そのためには詳細で実現性の高い計画や技術開発、資本力などの企業としての総合力が必要です。
多角化戦略の4つの種類
成長マトリックスの多角化戦略ですが、さらに4種類に分類されます。
下記に一覧にしてまとめましたので、チェックしてみてください。
- 垂直型多角化戦略
- 水平型多角化戦略
- コングロマリット型多角化戦略
- 集中型多角化戦略
多角化戦略の種類①垂直型多角化戦略
垂直型多角化戦略では生産するための技術やノウハウといった関連性はないものの、既存の市場で扱っていた製品と似た製品を製造・販売します。
例えば、ボールペンを製造していた企業が万年筆を生産するイメージです。
既存の取引先や従業員などの資源を活用できるのがメリットです。
多角化戦略の種類②水平型多角化戦略
企業が持っている技術やノウハウを活用でき、既存の市場と類似した市場に対して新製品を投入する戦略です。
電話機メーカーがFAXを生産したり競技用自転車メーカーがママチャリを作るようなものといえるでしょう。
今まで培ってきた技術とノウハウ、販売ルートを活用でき、シナジー効果(くわしくは後述)があると効果が高まります。
多角化戦略の種類③コングロマリット型多角化戦略
コングロマリット型多角化戦略では生産技術とノウハウもなく、市場もまったく未知の分野に進出する戦略です。
例えばセブンイレブンがATM利用料を目的にセブン銀行を設立したり、家電メーカーのSONYが映画業界に参入する例があります。
成功すると利益は大きいですが、その分リスクが高いといえるでしょう。
多角化戦略の種類④集中型多角化戦略
集中型多角化戦略では、デジカメのレンズを医療用に応用したりして、新しい市場に技術とノウハウの関連性がある製品を投入することを指します。
メリットとしては、新製品を生産するにあたって、すでにある程度の生産技術やノウハウ、経営資源を活用することができる点があります。
多角化企業のメリット
事業を多角化することで主に4つのメリットがありますが、いずれも企業の安定化や効率化を図ることができます。
一覧にしたのでチェックしてみてください。
- リスクの分散が可能
- プロダクトライフサイクルへの対応が可能
- シナジー効果が得られる
- 範囲の経済性が生まれる
多角化企業のメリット①リスクの分散が可能
事業を多角化する一番のメリットは市場環境や企業の状況の変化に対応してリスクを分散化させることができるということです。
一般的な変化として、法令が厳格化されたり、イノベーションの発生、消費者のニーズの変化といったものがあり、ここ数年ではその変化がさらに早く、大きいものになっています。
これにより、変化に追いつくことができなかったり適応できない企業は大きなダメージを受ることに・・・。
多角化によって、複数の事業を運営でき、収益のピーク時期をずらしたり収入源を増やしたりして経営の安定化を図ることができます。
万が一変化に対応できずに市場から撤退したり、事業規模を縮小することになっても、他事業に人員や資源を振り分けることができるので従業員の生活を守ったり、リストラによる企業イメージの悪化を防ぎます。
多角化企業のメリット②プロダクトライフサイクルへの対応が可能
「プロダクトライフサイクル」では製品の「一生」を示します。
どれだけ人気の製品であっても「開発期→導入期→成長期→成熟期→衰退期」という流れに従い、最終的には人気がなくなり、生産や販売が終了してしまいます。
1つの製品が衰退期に入ってしまったとしても別の製品・市場が成長期・成熟期なら企業全体としての収入は安定的に維持できるようになります。
こうしたことを考えると多角化戦略は企業の安定に必要といえるでしょう。
多角化企業のメリット③シナジー効果が得られる
「シナジー効果」とは複数の事業を同時に運営することで相乗効果でより大きな成果を出すことができる効果を指します。
シナジー効果がなければ、「2+2=4」ですが、シナジー効果があると「2+2」が5や10にもなりえます。
アンゾフはシナジー効果にも4種類あると主張しているので、一覧にしてみました。
- 販売シナジー:販売ルートや倉庫などの共有することで得られる効果
- 操業シナジー:一括で大量に仕入れるなどして得られる効果
- マネジメントシナジー:経営陣や管理職の能力、経験、ノウハウによリ得られる効果
- 投資シナジー:設備の共有や研究内容など投資を共有することで得られる効果
多角化企業のメリット④範囲の経済性が生まれる
「範囲の経済性」とは複数の企業が各自で事業を行うよりも、1つの会社で複数の事業をまとめたほうが効率的になるという理論です。
具体的に言うと、土地や人材の有効活用や副産物の活用、ブランド名を他製品にもつけるといったことがあります。
多角化企業のデメリット
といっても、多角化戦略にはメリットばかりではなく、デメリットも存在しますので、慎重に他分野に進出するかどうか判断していかなければなりません。
多角化企業のデメリット①経営の非効率
一つの事業だけをしているなら原材料を一括で購入したりしてコストカットが実現します。
しかし、多角化によって複数の事業で個別に発注をかけるようにしなければならないので、一つの事業のときと比べてコストカットが難しいと言えます。
また事業間で資源を共有できるものもあるので、効率化を図ることができる場合もありますが、重複する部分も多く、結果非効率に繋がりやすいです。
多角化企業のデメリット②コストがかかる
長期的な視点で見ると事業間でのシナジー効果や範囲の経済で効率的にすることもできますが、事業の立ち上げにはかなりのコストがかかります。
専門知識と経験を持っている人員を揃えたり、マーケティングをしたり設備投資が必要ですし、製品開発や販売活動などもしていかなければなりません。
こうしたことを考えると、多角化戦略を行うにはかなりの時間とコストがかかると覚悟しておかなければなりません。
多角化企業の成功例一覧
多角化に成功している企業の事例として、何度か紹介してきたセブンイレブンやSONYについてくわしく解説していきます。
多角化企業の成功例①セブンイレブン
以前までは「コンビニは高いからスーパーで買物をする」が当たり前でしたが、セブンイレブンがプライベートブランドを立ち上げて、そんな状況を打破しました。
小売業だけでなく、メーカとしても参入したことでスーパーと品質・価格面で競争できるようになり、コピーや公共料金の支払、セブン銀行などを始めました。
多様な多角化を可能にしているのは「店舗の共有」が大きいと言えます。
セブンイレブン以外の拠点・店舗を設置しようとするとそれだけ巨額の時間とコストが必要ですが、コンビニ内で多角化事業が完結するためそれだけコストも時間も抑えることができます。
多角化企業の成功例②SONY
日本の家電メーカーとして上位に位置するSONYはコングロマリット型多角化戦略として有名です。
本業はテレビやスマホ、カメラなどの一般の消費者向けの電子機器ですが、ゲームや半導体、映画、生命保険といった分野にも参入しています。
一時期本業である電子機器事業が赤字に陥りましたが、多角化によるリスク分散が功を奏し、経営は安定しました。
現在ではSONYの電子機器事業の売上が他の事業を支える程にまで回復しています。
多角化企業まとめ
この記事では企業の成長戦略や多角化戦略について一覧を交えて解説していきました。
コストがかかる課題はありますが、成功するとリターンは大きなものになります。
この記事のライター
U11
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