役員報酬を変更するには?変更可能な時期や手続き方法を解説
会社の設立時や業績の好転や悪化により、役員報酬の決定や変更を行いたい時があると思います。しかし役員報酬を変更できる時期や手順、変更するとかかる税金などわからないこともあるでしょう。この記事を参考にして役員報酬を変更する方法など確認していきましょう。
役員報酬の変更は可能?
役員報酬の変更は事業開始した日から3ヵ月以内に行うのが通常ですが、役員報酬の変更は時期を見定めれば、事業開始から3ヵ月以内でなくても、税金を増やすことなく増額・減額することができます。
税金の増加を気にしないのであれば、時期に関係なく役員報酬の変更は可能ですが、税金を多く支払わない方が無駄な出費を抑えることができるので、適切な時期に変更を行う方が無難でしょう。
役員報酬の変更が認められる条件
役員報酬の変更の条件①事業開始時から3ヵ月以内
役員報酬の変更できる時期は基本、事業開始した日から3ヵ月以内になります。1度役職報酬を決めると、1年間決めた役員報酬を受け取り続ける必要があります。事業を開始した日から3ヵ月を経過した後でも、役員報酬を変更することはできますが、特別な理由がない場合は税金の支払いが増加してしまいます。
3ヵ月経過してからの事業年度の途中に役員報酬を増額した場合、増額した分の役員報酬は損金算入することができなくなってしまいます。
逆に、3ヵ月経過してからの事業年度の期中に役員報酬を減額した場合、減額する前の損金算入ができなくなるなります。
売り上げの増加や減少により、役員報酬を増額又は減額を行いたくなるかもしれませんが、税金についても考慮して慎重に行っていく必要があるでしょう。
役員報酬の変更の条件②役員の昇格もしくは降格
役員の昇格や降格によって給与が増額や減額した場合、例外として損金参入できる形で役員報酬を変更することができます。しかしこの例外に当てはまるのは、やむを得ない事情という点を注意する必要があります。
- 役員が任期の途中に就任·退任した場合
- 役員が病気になり、代わりの人が就任する場合
- 組織再編成(会社の合併や分割)が行われた場合
上記のような場合、例外として役員報酬の変更を行うことができます。
役員の職務上の地位や職務内容が変更されることで、給与が変動するの仕方のないことです。そのため、事業途中や期中でも役員報酬を変更することができます。役員の給与変更をやむを得ない事由のことを臨時改定事由といいます。
役員報酬の変更の条件③業績悪化による減額が必要な場合
会社の経営状況の悪化や経営上の責任により減額する必要がある場合も、例外として事業の途中や期中であっても、役員報酬の変更を行うことができます。
業績悪化などの事由のこと業績悪化改定事由といいます。
例として、取引先の倒産などの業績悪化が避けられない状況であること、経営改善計画が作られ、役員給与減額が記載されていた場合などがあります。
社会的事情や第三者(株主や債権者、銀行)との関係上減額するしかない状況も含まれます。
減額が必要な場合と判断されないものは、以下のようなものがあります。
- 利益調整目的
- 一時的な資金繰りの悪化によるもの
- 業績目標を達成できなかった
減額の対象となるか判断して、役員給与の減額を行うようにしましょう
役員報酬変更の手順
役員報酬変更の手順①株主総会の開催
役員報酬変更を行うには、株主総会を開く必要があります。
役員報酬変更は、経営者の独自の判断で行うことは不可能です。
株主総会を開き、支給限度額を決めて取締総会の決議によって支給額を決定する必要があります。
決められた手順を踏むことが、税金などの手続きを行う際にも重要となってきます。事業の途中や期中であったとしても、臨時株主総会を開き役員報酬の変更を取締総会の決議などを踏まえて行い、議事録の作成を行うことが大切です。
総額枠方式の場合は、役員報酬の改定が総額枠の範囲内であったとしても取締総会決議が必要になるので注意しましょう。支給額が確定しない場合、その算定方法を決議するだけで大丈夫です。
役員報酬変更の手順②役員報酬変更の議事録の作成
株主総会後に、株主総会の議事録を作成する必要があります。議事録が残っていなければ、役員変更報酬の変更が正当な手順で行われていたとしても、損金算入されない場合があります。また、作成した株主総会の議事録を保管しておくことも重要になります。
議事録は会議の内容や流れ、会議の結果が記載されている書類であり、それを伝える文書になります。臨時株主総会を開催したときにも、株主総会の議事録の作成を行う必要があるので注意しましょう。
役員報酬変更の手順③月額変更届を年金事務所に届出
役員の給与が増額・減額するなどの給与の変動があった時、標準報酬月額を見直すのですが、その時に月額変更届を年金事務所に届出をします。給与が大きく変更されることにより、社会保険料も変動するので年金事務所に月額変更届を届出し社会保険料を変更してもらう必要があります。
標準報酬月額の等級が2等級以上増減する場合は、年金事務所に被保険者報酬月額変更届を届出することが必要で、5等級以上増減する場合は役員報酬を増額·減額したことがわかる取締総会議議事録や賃金台帳のコピー、出勤簿が必要になってくるので準備をしておきましょう。
役員報酬変更の議事録の書き方とテンプレート
役員報酬変更の議事録の書き方
役員報酬変更の議事録は、以下の項目を記載するようにしましょう。
- 株主総会を開催した日付と時間
- 議決権のある当会社の株主総数
- 議決権のある発行済株式総数
- 総株主の議決権の数
- 出席株主の数
- 議決権のある持株総数
- 議決権の総数
- 主席取締役
- 議長となった取締役の氏名
- 変更する役員の報酬金額及び支給を開始する年月
- 報酬を変更する理由
- 株主総会を閉会した時間
- 議事録を作成した日付と会社名
- 出席した取締役の著名と押印
これらの項目を確認し、テンプレートを確認していきましょう。
役員報酬変更の議事録のテンプレート
株主総会議事録
令和○年○月○日午前○時○分、○○株式会社本社において、株主総会を開催した。
発行株式総数 ○○○株
この議決権を有する株式総数 ○名
この議決権の数 ○○○個
出席株主数 ○名
この議決権の個数 ○○○個
本日の出席株主人員及びその持株数により、本総会は有効に成立したため、
代表取締役○○○○が議長となり、開会を宣し、下記のとおり議案の審議に入った。
第1号 役員報酬金額承認の件
議長より、役員報酬金額については下記のとおりとしたい旨を述べ、その理由を説明した。取締役各個の受けるべき報酬金額について、全員一致をもって決議されてたことより、その報酬金額を下記の通りにすることを決定し、可決された。
代表取締役 ○○○○ 月額役員報酬 ○○○○○○円
取締役 ○○○○ 月額役員報酬 ○○○○○○円
令和○年○月○○日以降支給される報酬金額より適用する。
以上をもって本日の議事を終了したので、午前○時○分、議長は閉会を宣した。
上記の決議を明確にするため議事録を作成し、本議事録を作成しここに記名押印する。
令和○年○月○○日
株式会社○○ 株主総会
議長 代表取締役 ○○○○ 印
出席取締役 ○○○○ 印
出席取締役 ○○○○ 印
役員報酬の変更方法まとめ
役員報酬の変更方法を確認してみていかがでしたでしょうか。
役員報酬の変更の時期を間違えると税金が多くかかることや、変更した時に社会保険料が変動するようであれば年金事務所に月額変更届を提出し、社会保険料の変更を行ってもらうなどの気をつけるべき点が理解できたと思います。
業績の変化により、役員報酬の変更を行いたいと思いますが、変更の手順や注意点を理解して行っていくようにしましょう。
この記事のライター
横山 峻己
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