属人化はよくない?リスクと解消方法を徹底解説
「属人化の解消を!」というフレーズをよく耳にします。そこで今回は属人化の話です。属人化の意味すらわからないという方のために網羅的に記事をまとめてみました。この記事を読めば、仕組化やマニュアルがいかに大切なのかが、7分でおわかりいただけると思います。
目次
属人化とは?
属人化とは「ある業務を特定の人だけが把握している状態」です。たとえばアプリ開発などの専門性の高い仕事で「このアプリのプログラミングは○○さんしか修正できない…」という状態が属人化です。
一般的にデメリットが指摘されていてマイナスのイメージがあります。というのは属人化が解消されることにより業績が伸びたり、大企業のほとんどが属人化していないからです。とはいえ解消できない業務が存在するのも事実です。
具体的には情報が共有されていないため担当者が突発的にいなくなると、その業務がストップしてしまう、業務の引継ぎが出来ないといった様々な問題があります。近年、こういった問題から属人化の解消方法を模索する動きがあります。
属人化と標準化の違いは?
属人化と標準化の違いを説明する前に、標準化について説明します。標準化とは仕事を仕組化し誰でも特定の業務を行える状態のことを指します。国に例えると、属人化が王政国家で、標準化が法治国家です。人なのかルールなのかということです。
そして属人化と標準化の違いは、仕組化&マニュアルがあるかどうかです。たとえばマクドナルドのハンバーガーの味は日本全国どこも同じ味です。東京のハンバーガーは美味しいけど福岡のハンバーガーは不味い、なんてことはありません。従業員が変わったから味が変わった、なんてことも起こりません。
それは仕組化されたマニュアルで作っているからです。もしマクドナルドが属人化していたら、店舗ごとに味が違う or 人が変わるたびに味が変わる、というようなことが起こります。
なぜ属人化が起こるのか?原因は?
デメリットが指摘される属人化ですが、なるべくなら対策したいですよね。ですが原因がわからないまま、やみくもに対策しても効果が薄いです。なので属人化が起こる原因をいくつかご紹介していきます。労働環境や業務内容、または社員個人の思惑といった原因が考えられています。
属人化が起こる原因①専門的な業務は属人化しやすい
専門的な業務は属人化しやすいです。専門的な業務は難しい知識や特別なスキルが求められるため、人に依存した業務形態になりがちです。
たとえば前述したアプリの場合だと、アプリの細部のプログラミングのコードは製作者しか把握していなかったりします。難解で細かい業務ほど情報が膨大で、情報共有が難しいため属人化しやすいです。
属人化が起こる原因②業務を共有していない
属人化が起こる原因は業務を共有していないからです。忙しくてデータを整理する時間がない、情報共有が徹底されていない、という状況で属人化します。締め切りや取引先の対応に追われていては、整理整頓に時間をかけるのも難しいですよね。
マニュアル通り業務を進めていれば他の社員でも対応可能ですが、そのマニュアル自体を作成していない or 作成できていない、といったケースが少なくありません。
属人化が起こる原因③故意に業務を抱え込む
故意に業務を抱え込む人がいるため属人化する場合があります。たとえばあるプロジェクトをAさんが担当していたとします。もしAさんが情報を開示しなければ、他の社員はそのプロジェクトを進めることができません。そうなると「Aさんじゃないと!Aさんが必要です!!」となるわけです。
Aさんは「Aさんにしかできない業務」を自ら故意に作ろうとします。Aさんに存在価値が生まれるためです。優位性を保てるからです。社内でポジションを確立するために業務を属人化する人がいます。
属人化が引き起こすリスク
属人化は問題発生のリスクを抱えています。特定の担当者にしか業務を遂行することができないからです。属人化によってどのような問題が起こるのか?を4つのリスクを説明しながらご紹介します。
属人化が引き起こすリスク①生産性の低下のリスク
業務が属人化することのリスクは生産性の低下です。当たり前のことですが1人より2人、3人より4人のほうがスピーディーに業務をこなすことができるからです。
会社はチームで動いているので、業務を遂行できる人数が減ると、必然的に生産性が下がります。属人化の状態で担当者が忙しく手が回らないとか体調不良で業務がストップしてしまうと、会社全体の利益に悪影響を与える可能性もあります。
属人化が引き起こすリスク②業務効率低下のリスク
担当者が突然いなくなると業務効率が大幅に低下します。業務が属人化していても担当者に任せておけば問題はありません。むしろ能力の高い担当者が対応しているうちは、むしろスムーズに事が運びます。
ですが問題は担当者が業務から離れたときです。その担当者の穴埋めに物凄い時間と労力がかかります。たとえば引き継ぎで大量のデータを整理しないと把握できないといったケースや業務のノウハウの吸収に苦労するといったケースです。こういった業務の引き継ぎをしている時期は作業効率は当然低下します。
属人化が引き起こすリスク③一定の品質を保てないリスク
たとえばマクドナルド。属人化している状態では、一定のクオリティーが保てません。属人化したマクドナルドを想像してほしいのですが、フライドポテトの出来栄えは揚げる人の気分です。属人化しているのでフライドポテトを作るマニュアルが存在しません。たとえば油の温度を何℃にするのか、何分揚げるのかといったマニュアルがありません。そうすると人が入れ替わった際に、硬いフライドポテトや油ギッシュなフライドポテトが作られてしまいます。
属人化が引き起こすリスク④ミスを隠ぺいするリスク
属人化している業務はミスしても誤魔化すことが可能です。他の社員の目が届かないため、仮にミスがあった場合、ミスを誤魔化せてしまうというデメリットがあります。バレない状態でのミスは誤魔化そうとします。 紀元前3世紀ごろの中国の思想家荀子の性悪説が有名ですが、2000年前から人は誘惑に弱いことが言われ続けています。属人化ではミスを隠ぺいするリというデメリットがあります。
属人化にメリットはあるのか?
属人化を解消しようという記事の流れでしたが、メリットも存在します。たとえば担当者本人にとっては、いつも通りの手慣れた業務で働きやすいです。また販売職や営業職など人の個性によりセールスの売上が変わる業務の場合、属人化のほうがよい成果を生み出すことがあります。属人化にはメリット&デメリットがあることを把握した上で、解消するかしないかを決めるのがよさそうです。
リスク回避のために業務の標準化を!
属人化にはメリットがありますが、担当者が業務を担っている場合に限りです。担当者がその業務から離れた瞬間にデメリットへと変貌します。投資のリスク分散の考え方からも標準化してリスクヘッジしておくのがよさそうです。
昔は定年退職まで仕事を勤め上げるのが一般的でしたが、近年はそういった傾向が薄れてきているので、メリットよりデメリットが目立ちます。なのでデメリット回避のために業務の標準化を目指す企業が多いです。
全て属人化された業務を標準化する必要はあるのか?
全て属人化された業務を標準化する必要はあるのか?という質問が多いのですが、答えはNoです。人でも物でも良い面と悪い面が存在します。属人化も同じようにメリットとデメリットがあります。
たとえば仕組化したほうが力を発揮する事業と担当者に任せたほうが業績が伸びる事業があります。属人化していることで抱えるデメリット&属人化することで得られるメリットがあります。属人化=よくない、とは一概に言えません。ですが多くの場合、標準化したほうが良い結果が得られるのも事実で、業績が上がる企業が多いです。
業務の標準化をすることのメリット
ここまで属人化のメリット&デメリットをご紹介してきました。属人化とは、ある業務を特定の人しか行えない状態のことでしたよね。それに対して標準化とは、マニュアルなどである業務を誰でも行える状態でした。メリット&デメリットのある属人化ですが多くの場合、標準化したほうがメリットが大きいと言われています。
業務の標準化をすることのメリット①品質を保てる
業務の標準化をすることのメリットは品質を保てることです。業務が属人化の状態にあるときは、担当者以外が業務を行った際にミスが多発したり理解できない箇所の解決に時間がかかる、といった問題が発生します。ですが標準化で仕事を「見える化」できていれば、誰でも安定した成果が出せるようになります。人によって品質にバラつきがなくなるため、一定の品質を維持することができるというわけです。
業務の標準化をすることのメリット②スキルの向上に繋がる
続いてのメリットはスキルスキルの向上に繋がるところです。属人化した状態では担当者はスキルアップできますが、それ以外の人が成長できません。標準化することによって誰もがチャレンジでき、成長する機会が持てます。結果的にスキルを底上げできる環境が整うので、社員一人ひとりの能力が向上します。
業務の標準化をすることのメリット③問題点&改善点が見えてくる
業務を標準化した場合、ある特定の業務にたくさんの人が関わることになります。その結果、多角的な視点で見えるようになり、担当者一人では気づけなかった問題点&改善点が浮き彫りになります。
また、これまで個人に蓄積していたノウハウが社内に蓄積されるようになり、新入社員や中途社員、または他部署から移動してきた社員でもノウハウを共有することが可能です。
業務の標準化をすることのメリット④休暇を取得しやすい
標準化すると会社だけでなく担当者にとってもメリットがあります。具体的には、急な用事で会社を休むことができるようになる、有給休暇を取りやすくなる、などです。
属人化のまま業務を進めていると、担当者は「自分しかいない…。」という緊張感で業務に臨みます。ですがもし標準化されていたら、担当者不在でも業務を進めることができるので、「私がいなくても代わりはいるもの」と気軽に休みを取得できるようになります。
休むと耳にすると悪いイメージが思い浮かびますが、休むことでパフォーマンスの向上が見込めます。たとえばメッシが巧みな技でゴールできるのは、ここぞというときに体力を温存しているからです。常に全力で走っていてはチャンスを逃してしまいます。
業務の標準化をするためにすべきこと
属人化のデメリットをご紹介してきましたが、「属人化の解消のためには具体的にどうしたらいいの?」という疑問をお持ちの方へ向けて、業務の標準化をするためにすべきことをご紹介していきたいと思います。
業務の標準化をするためにすべきこと①マニュアルを作成する
マニュアルを作成しましょう。マニュアルとは、たとえば作業要領書や作業手順書といった作業を行うにあたっての説明書のようなものです。マニュアルを作成して、社内で徹底して守りましょう。基準をバシッと決めてしまえばそれに沿って業務を遂行します。まずはマニュアルを作ってしまって徐々にブラッシュアップしていく、大手企業のマニュアルを真似する、といった方法があります。
業務の標準化をするためにすべきこと②業務を仕組化する
業務を仕組化しましょう。仕組化とは会社の成績を伸ばすために行うルールのことです。ビジネス書「破天荒フェニックス」で有名なOWNDAYSという大きな眼鏡チェーンの会社では、幹部や店長を総選挙で選ぶそうです。「えぇー!?」と思うかもしれませんが上手くいくようです。
トップにしか見せない顔する人いませんか。そういう人は社長が全部決めてたらわからないけど、選挙だったら「あの人、二面性あるよね」とか「上にはいいけどさ、下にはね…」というときに選ばれなくなっていくわけなんです。こういった仕組化で上司への不満が減り、会社の業績が伸びたそうです。
業務の標準化をするためにすべきこと③PDCAを回していく
仕組化やマニュアルを作ったら終わりではありません。いきなり完璧なものは作れないからです。なのでPDCAを回して改善していきましょう。PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字をとったもので、業務の無駄をなくしたいときに使う方法です。
このPDCAを繰り返すことで理想の仕組化やマニュアルを作ることが可能で、今まで以上に標準化に近づくことができます。このPDCAサイクルを繰り返してどんどんアップデートしていきましょう。
属人化のリスクと解消方法まとめ
属人化のメリット&デメリットや解消方法の話をしてきましたがいかがでしたか。業種によっては解消するのが難しい仕事もありそうですが、情報を共有して「見える化」しておくのがよさそうです。マニュアルの作成は標準化にとても効果的ですが、マニュアルを作るのは簡単ではありません。普段の業務に追われマニュアル作成にかける時間がなかなか取れない、という人も多いとは思いますが、属人化を解消するヒントになれば幸いです。
この記事のライター
松田佳祐
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