労働条件通知書ってどんな書類?書く前に抑えておきたい書き方と記載事項
労働条件通知書とは事業者が交付する労働条件をまとめた書類です。 主な記載事項としては労働期間や賃金などになりますが、労働契約書とは違い、一方的な書類です。 この記事では労働条件通知書の記載事項を始めとした書き方の紹介や書き方の注意などをまとめています。
目次
労働条件通知書の意味とは?
「労働条件通知書」とは事業主と労働者が雇用契約を結ぶときに交付される書類を指します。
事前にある程度の労働条件の確認はされていると思いますが、口頭では「言った・言わない」の問題があったりトラブルになりやすいです。
そこで書面で正式に労働条件を明示することでトラブルを回避しようとするものです。
労働契約の期間や始業・就業、休憩時間、賃金など明記しなければならない項目が定められており、違反すると罰金を課せられることもあります。
労働者が働く上で必要で大切な情報が記載されているので、あらかじめその企業で働く労働条件を知ることができます。
労働条件通知書と雇用契約書の違い
同じように事業者と労働者が交わす書類に「雇用契約書」があります。
労働条件通知書と雇用契約書の違いとはなんでしょうか?
労働条件通知書は事業者から労働者に一方的に労働条件を通知する書類のため、労働者のサインと捺印は不要ですが、雇用契約書では事業者と労働者が双方が合意をしたことを示すための署名・捺印を行い、それぞれ1部ずつ保管・管理します。
ただし、契約内容の確認ができるようにするためにできるだけ書面で雇用契約書を発行することが求められていますが、必ず発行しなければならない書類ではないので罰則もありません。
ここも交付が義務付けられており、交付しない場合罰則がある労働条件通知書とは異なります。
労働条件通知書に関する法律
法律で労働条件通知書の交付が義務付けられていますが、具体的には「使用者は労働条件の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」とされています。
そして労働基準法第15条第2項によると、締結した労働条件と実際の労働条件が異なるときは労働者はただちに労働契約を解消できるとあります。
つまり、「退職するなら30日前に伝えること」といった内容の就業規則があったとしても、労働条件通知書と労働条件が異なっていた場合、退職することを伝えてすぐに退職できます。
労働条件通知書の書き方・記載事項(必須項目)
労働条件通知書には労働基準法によって、「必ず明示しなければならない事項」と「定めをした場合に明示しなければならない事項」が定められています。
以下ではそれぞれについて解説していきますが、まずは以下の「必ず明示しなければならない事項」についてお伝えしていきます。
労働条件通知書の書き方・記載事項①契約期間に関すること
まずは労働契約期間があるのか、つまり有期なのか無期なのかを示し、有期契約なら契約期間をいつからいつまでに設定するのか、契約更新についても記します。
くわしくは後述する「労働条件通知書の書き方の注意点」でお伝えしていきます。
労働条件通知書の書き方・記載事項②就業場所および従事する業務に関すること
どこで、どういった内容の業務をすることになるのかといった情報は労働者が知っていて当然のものです。
就業場所は労働者が実際に働くことになる店舗や会社の住所だけでなく、「株式会社○ 本社 営業部」のように部署名を記載しても問題ありません。
異動・転勤が後々行われることも考えられますが、その時は最初に就業する場所のみで構いません。
しかし、できるのであれば、そのことを労働条件通知書に記載しておいたほうが親切と言われています。
労働条件通知書の書き方・記載事項③始業・終業時刻
始業・終業時刻だけでなく、休憩時刻や所定労働時刻についても明記します。
注意してもらいたいのが、労働時間について。
企業によっては朝礼や掃除があると思いますが、それらの時間も労働時間に含まれます。
また、シフト制やフレックスタイム制、裁量労働制を導入しているなら従業員の勤務時間はバラバラになってしまうので、一律に定めることが難しくなります。
そういったときは各シフトの始業・終業時刻をそれぞれ記載したり、勤務規定などの別の書類を参照するように記載します。
労働条件通知書の書き方・記載事項④休日・休暇
週休2日を導入している企業が多いと思いますが、労働基準法では週1日もしくは4週間のうち4日以上の休日を取らせるように定められています。
これらを「法定休日」といい、それ以上の休日が設けられているならそれらを「法定外休日」といいます。
つまり週休2日制を導入している企業は法定外休日も採用していることになります。
休日といえば忘れてはいけないのが「有給休暇」。
有給休暇は6ヵ月以上継続勤務した労働者に年10日の有給休暇を与えなければならず、パートタイム労働者でも勤務日数に応じて与えられます。
また、働き方改革の一貫として2019年から年10日の有給休暇のうち5日は使用者が時季を指定して取得させなければならなくなりました。
これら休日についても記載します。
労働条件通知書の書き方・記載事項⑤賃金
各都道府県で定められている最低賃金以上を支払うことや残業手当や通勤手当などの各種手当について、賃金の支払い方法や支払日なども労働条件通知書に記載します。
労働条件通知書の書き方・記載事項⑥退職について
労働者が退職するときに必要な手続きや定年制度の有無、社保の加入状況や雇用保険の有無を記載します。
労働条件通知書の書き方・記載事項(必須でない項目)
次に関しては「定めをした場合に明示しなければならない事項」として定められていますが、あくまでも「定め」があるときであり、退職金制度や職業訓練度について定めていないのであれば、労働条件通知書に記載しなくても問題ありません。
- 退職手当に関すること
- 賞与などに関すること
- 食費、作業用品などの負担に関すること
- 安全衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 災害補償などに関すること
- 表彰や制裁に関すること
- 休職に関すること
労働条件通知書の書き方・記載事項①退職金
退職金制度を採用しているとしても、多くの企業で「勤続3年以上」などの条件をつけていると思います。
そうしたときは退職金制度でめている条件をそのまま記載してもいいですし、「退職金規定に従う」のように定められている規定・文書を参照するように記載してもいいです。
労働条件通知書の書き方・記載事項②職業訓練
業務で必要となる知識や技能を習得させるために職業訓練を実施する企業もあると思いますが、そうしたときも労働条件通知書に記載しなければなりません。
労働条件通知書の明示義務違反に対する罰則
労働条件通知書に記載しなければならない項目に対しての記載がされていない場合や明示義務のある項目について明示されていないとき、労働条件通知書を交付しなかった場合、それぞれ罰金が課されることがあるので注意してください。
厚生労働省のテンプレートを活用して労働条件通知書を作成する
労働条件通知書の記載事項について解説を行いましたが、いざ書こうとしても見本がなければなかなか難しいのではないでしょうか?
とくに不適当な労働条件通知書だった場合、罰則の可能性もあるため注意してもらいたいと思います。
そこで厚生労働省が公開しているテンプレートを活用して労働条件通知書を作成してみませんか?
労働基準法を監督している厚生労働省が出しているテンプレートなので、インターネットで公開されている他のヘタなテンプレートを活用するよりは安心感が違います。
ダウンロードは下のボタンから厚生労働省のHPに移動できます。
労働条件通知書の書き方の注意点
厚生労働省のテンプレートに従って個別の労働者に対して労働条件通知書を交付することになりますが、「有期雇用契約」を結ぶ労働者に対して注意してもらいたいことがあります。
「有期雇用契約」とは労働期間があらかじめ定められている労働契約を指しますが、上限が3年と定められており、条件を満たすと5年に延長できます。
主な有期雇用契約を結んでいる労働者として以下のものがあり、厚生労働省によるとこれらの労働者のうち7割近くが有期雇用契約を結んでいるとしています。
- 準社員労働者
- パートタイム・アルバイト労働者
- 高度専門職労働者
- 定年後の再雇用の場合の嘱託社員労働者
「有期」である以上、必ず終了日を明示しなければなりませんが、契約期間を自動更新にしてしまうと事実上の無期雇用契約になってしまうこともあり得るので、注意してください。
労働契約期間の更新について厚生労働省が参考のために示している選択肢として
- 自動的に更新する
- 更新する場合がありえる
- 契約更新はしない
としており、更新するのであれば、厚生労働省は以下の基準で契約更新をするように示しています。
- 契約期間満了時に業務量により判断する
- 労働者の勤務成績、態度により判断する
- 労働者の能力により判断する
- 会社の経営状況により判断する
- 従事している業務の進捗状況により判断する
有期契約労働者の場合、これらを踏まえて労働者条件通知書を作成・交付しなければなりません。
次からは有期雇用契約を結んでいることが多い、「パートタイム・アルバイト労働者」と「派遣労働者」に関する労働者条件通知書の書き方の注意について解説していきます。
労働条件通知書の書き方の注意点①パートタイム・アルバイト労働者
パートタイム・アルバイト労働者などの短時間労働者は労働時間があらかじめ決められていることが多いため、勤務時間は労働者の希望日時と合わせたものにしなければなりません。
例えば勤務は「○年○月○日から○年○月○日までの、週○日、1日○時間労働、勤務時間帯は○時から○時まで、時給は○円」のように記載し、その他の条件は別途追加していきます。
また法律によって明示するべき項目がほかにも定められています。
例えば、パートタイム・アルバイト労働者にはボーナスや退職金が支給されないことが一般的であるため、労働条件通知書でボーナスや退職金、昇給の有無をあらかじめ記載しなければなりません。
また、パートタイム・アルバイト労働者は正社員と比較して労働条件に格差が生じていることが多く、そうしたことを相談できる窓口の設置が事業者に義務付けられています。
労働条件通知書の書き方の注意点②派遣労働者
派遣労働者の場合は正社員やパートタイム・アルバイト労働者とは異なる点がいくつかあります。
一つは「仕事の報酬」の名称について。
正社員やパートタイム・アルバイト労働者の場合は「仕事の報酬」を「賃金」と呼びますが、派遣労働者の場合は「派遣料金」という言葉を使用します。
そのため、派遣労働者に交付する労働条件通知書では「派遣制度の概要」と一緒に「派遣料金・平均額」で「1万円/8時間」のように単価を示した派遣料金を明示しなければなりません。
しかし、派遣労働者の場合、労働条件通知書を交付するのはあくまでも派遣元の企業なので労働条件通知書が雇用契約書と同じ内容・扱いにされることが多いです。
労働条件通知書の書き方と記載事項まとめ
「労働条件通知書とはなにか」「どうやって書けば良いのか」といった疑問に答えるために書かせてもらいました。
労働契約書とは違い、適切な内容な労働条件通知書を交付しなければ違法となる可能性があるため、注意してください。
厚生労働省のHPではテンプレートを無料ダウンロードできるのでそちらを活用しても良いかもしれませんね。
この記事のライター
U11
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