のし(熨斗)とは?シーン別の書き方をご紹介
日本人なら贈り物に欠かせないのが、のし(熨斗)です。とはいうものの、お歳暮、お年賀、結婚祝いに、出産祝いに、いろんなシーンがあって、色も、形も、書き方も、どれをどうしたらよいものか。のしの選び方、書き方を知って、シーンにあったのしで、贈り物を包装しましょう。
のし(熨斗)とは?
厳密にいうと、「のし」というのは、熨斗鮑(のしあわび)といいます。もともと鮑(あわび)を薄く熨して作る鮑のしから始まっているものです。鮑(あわび)は長寿を意味する縁起物とされており、神事で奉納される際に贈答品に添えられていました。そこから、贈答品には、掛け紙を掛けて、のしを貼り、水引で縛っていました。のしは、紅白の紙の中に鮑になぞらえた細長く黄色い棒状の紙を入れたもので、基本的に品物の表面の右上に付けます。今は、掛け紙にのしも水引も印刷してあるものがほとんです。そして、この掛け紙のことを「のし紙」といい、簡単に「のし」と言うようになりました。
のしは必須?
のしが必須かどうかは、もちろん、そのシチュエーションによります。のしは、日本の伝統的な贈り物のスタイルです。親しい間柄で、ちょっとしたプレゼントであれば、包装だけでもいいでしょう。最近では、簡易包装も当たり前になっています。しかし、お歳暮、お年賀、結婚祝い、出産祝いや、お礼といったフォーマルな贈り物をする場合には、のしは必要になります。会社の上司や親戚などの目上の方への贈り物でも、のしがあれば特別な思いを表すこともできます。ライフスタイルが大きく変わっても、日本人が大切にしてきた相手を敬う気持ちに変わりはありません。そういう日本人の美学も、のしから伝わってきます。
のし紙の書き方のマナー
のし紙には、いくつか種類があります。会社の上司や親戚などお歳暮、お中元、お年賀などの季節の挨拶。出産、結婚、夫婦、長寿などのお祝い。それぞれののし紙や書き方があります。色やかたち、書き方など、贈り物のシーンによって、選ばなくてはなりません。せっかくのし紙をつけたのに、のし紙の書き方のマナーを知らないと、組み合わせがバラバラで、内容がチグハグだったり、贈られた人に失礼な印象を与えてしまいます。
会社の上司や親戚などの年配の方は、のし紙のマナーについては厳しいです。お歳暮、お年賀の季節の挨拶や、長寿や夫婦のお祝いには、身につけておくべきマナーと言えます。
のし紙の構成要素の名称
のし紙の構成要素は、のし、水引、表書き、名入れとなっています。掛け紙、のし、水引はそれぞれ別のものでした。ライフスタイルの変化とともに、徐々に簡略化され、現在はのし、水引が、場合によっては表書きさえも、印刷されたものを使用するのがほとんどとなりました。デパートだったら、品物を購入する際に用途を伝えて、包装と一緒にのしも作成してくれます。
のし
のしは、のし紙の右上に印刷されているものです。長く黄色い棒状のものを紅白の紙に包んんだものが印刷されています。繰り返しになりますが、のしは鮑(あわび)を薄く熨したものが起源となっています。鮑は縁起物とされていますので、のしは慶事にしか使用しません。弔事の場合は必ずのしが無く水引だけが印刷されたのし紙を使用します。また、のしには生ものという意味もありました。ですので、生ものを送るときには、のしは貼らないものでした。弔事では生ものを供えてはならないといわれていますので、弔事にはのしは貼らないともいわれています。
水引
水引は、のし紙の中心に印刷されているもので、もともとは掛け紙を贈り物に縛るものでした。色、結び方がいくつか種類があって、それぞれに意味が違います。もともとは、中国との貿易で赤白の紐が使われていたから、古来から宮廷への献上品には赤白の紐が使われていたから、と由来は諸説ありますが、未開封のものという意味で使われてきたようです。
表書き
表書きは、贈り物の目的を表すものです。水引の上半分の中心に書きます。筆書きの場合、慶事では、濃い炭で書き、弔事では淡い炭で書きます。印刷であっても、シーンに応じて濃淡をつけます。お礼、仏前、粗品と定型のものもありますが、お祝いはパターンが多くなります。出産、七五三、入学、卒業、結婚と人生のイベント毎に、お祝いがあります。夫婦になれば、銀婚、金婚と年数に応じたお祝いもあります。ですので、お祝いの場合は、種類も多いので単に「御祝」とだけ書くこともあります。
名入れ
名入れは、贈り主の名前を書きます。水引の下半分の中心に書きます。表書き同様、シーンに応じて濃淡をつけます。連名で贈る場合は、右側が上位になります。会社の上司や、年齢が上の方から右側に書きます。会社名を入れる場合も右側から書きます。
一般的には、名入れは氏名を記載しますが、病気見舞いの内祝い、お礼などの粗品や寸志、は苗字だけの場合が多いようです。名前だけの場合は、結婚式の引出物は夫婦新郎新婦の名前を連名にします。出産祝いの内祝いは、生まれた子どもの名前だけを書きます。
水引の紐の種類と意味
のし紙の書き方で、最も複雑なのが、水引かもしれません。紐の種類が、結び方、色があって、それぞれに意味があります。
結納や結婚式などは、お祝いの気持ちを盛大に表現するために、水引を使って、鶴、亀などをかたどることもあります。水引を使うことで、贈り物をとても華やかな印象を与えることができます。反対に、商店などの年賀の挨拶や粗品などの簡素なものでは、水引を省略することもあります。
結び方
もともとは掛け紙を縛る紐でしたので、結び方が決めれられています。そして、それぞれに意味があります。
蝶結び
蝶結びは、「すぐにほどけ、何度も結び直せる」ことから、何度あってもいいお祝い事やお礼や季節の挨拶などの一般贈答に使います。お祝いなら、新築祝いや、出産祝いや、長寿、結婚記念のお祝いに用いられます。一般贈答では、お年賀やお歳暮の季節の挨拶、内祝いや粗品などのお礼にも使えます。
結び切り
慶事であっても、何度あっても良いことばかりではありません。結び切りは、「一度結んだらほどけない」ことから、一度きりのお祝いで用いられます。結婚祝いや結婚内祝い、お見舞いやお見舞いの内祝い使用します。弔事でも、繰り返さないという理由から、結び切りを使用します。
あわじ結び
あわじ結びは解けにくいことから、結び切りと同じように使用します。しかし、もともとは神事で用いられる結び方なので、オールラウンドに用いられています。慶事、弔事のどちらでも使用できるのが特徴です。
紐の本数
水引の数は、一般には五本です。大事な贈り物には七本、九本などと奇数で増やしていくこともあります。これは、奇数が縁起が良いとされているところからきているようです。結婚祝いの場合は、偶数にはなりますが、二筋を合わせることで縁起がいいとされ、十本にすることがあります。
紐の色
赤白
一般的な慶事で用いられます。お歳暮、お年賀などの季節の挨拶、結婚祝い、出産祝い、夫婦、長寿などの祝い、内祝い、粗品などのお礼なども、弔事でなければ、赤白を選びます。
金銀
豪華な印象を与えたいときには、赤白に替えて、金銀を用いることもあります。結納や結婚式で用いられることが多いです。
黒白
黒白は、葬式などの弔事で使用します。高価なものを包む場合は、銀白の水引を用いることがありますが、基本的には、黒白になります。
黄白
あまり一般的ではありませんんが、黄白は年忌法要で用いられます。年忌法要となると、初七日から始まって、四十九日、百日、一周忌、三回忌、七回忌と、続いていくものです。地方や宗教によって違いはありますが、納骨が済んでいれば黄白を選ぶことを基本とするとよいでしょう。
【シーン別】のし紙の書き方
のし紙の書き方①一般的なお祝い
一般的なお祝いの書き方ですが、一言で「御祝」とすることもできます。しかし、それでは少し寂しいようなら、その贈り物の目的も書くとより丁寧といえます。出産祝いなら、「御出産祝」、「祝御出産」と書くことができます。
のし紙の書き方②お歳暮
お歳暮、お中元、お年賀は季節の贈り物になりますので、最も多く使うことになるでしょう。会社の上司や親戚などの目上の方に贈ることが多いでしょうから、間違うことは許されません。
のし紙の書き方③結婚式の引出物
結婚式の引出物では、夫婦新郎新婦の名前を書きます。夫婦連名は、右が新郎、左が新婦にするのが一般的です。表書きの「寿」も、慶事には様々なシーンでよく使われる言葉なので、覚えておくとよいでしょう。表書きを「松の葉」とすることもあります。これは、松の葉が二本一対であることから、夫婦の象徴として用いられます。また、夫婦だけでなく、両家からのお礼として贈る場合は、両家の苗字を連名で入れます。結婚式なので、水引は結び切りになります。
のし紙の書き方④出産祝いの内祝い
出産祝いをいただいたら、内祝いとしてお返しを贈ります。誕生した子供の名前を書くことで、名前を覚えてもらうようにします。
のし紙の書き方⑤新築祝い
新築祝いは、一生のうち何度もあることではありませんが、「何度あってもいいこと」として、水引は蝶結びを選びます。表書きは、「新築御祝」の他に、「祝御新築」「後新築祝」が考えられます。
のし紙の書き方⑥粗品
粗品も贈り物ではよく使います。会社の上司に招かれたり、夫婦で出かけて行くようなときの手土産に使うことが多いです。また、贈り物が二つになるようなら、一つはその表書きを、もう一つは「粗品」とすることもあります。
のし紙の書き方⑦病気見舞い
お見舞いも、数の多い贈り物です。病気だけでなく、火事、災害、事故もお見舞いになります。お見舞いで特に注意が必要なのは、のしです。のしのないのし紙を選びましょう。水引も繰り返さないという意味から、結び切りを使います。
のし紙の書き方⑧病気見舞いの内祝い
お見舞いのお返しですが、お見舞いとは違って、のしのあるものを選びます。お返しですので、お礼の気持ちをあらわすためです。
のし紙の書き方⑨御仏前(葬儀)
葬儀での贈り物は、水引の色は黒白とし、のしはないものを選びます。表書きは、宗教によっては、「御霊前」「御供」とする場合もあります。
のし紙の書き方⑩御仏前(年忌)
年忌では、葬儀と同じになりますが、水引の色は黄白にします。
のしの書き方まとめ
のしは、熨斗鮑(のしあわび)といい、鮑(あわび)を薄く熨して作る鮑のしのことですが、今では時代とともに変化し、今では日本の伝統的な贈り物のスタイルになっています。のし紙は、色やかたち、書き方など、贈り物のシーンによって選択します。のし紙の構成要素は、のし、水引、表書き、名入れとなっています。のしは、のし紙の右上に、水引は、のし紙の中心に印刷されています。表書きは、贈り物の目的を表すもので、名入れは、贈り主の名前を書きます。蝶結びは、何度あってもいいお祝い事や一般贈答に使い、結び切りは、二度とあってはならないようなときの贈り物に使います。水引の色は、赤白、金銀は慶事、黒白、黄白は弔事と使い分けます。
のしは、伝統的な日本の贈り物の文化として、大切にしなくてななりません。しかし、こういった習慣も、現在ではずいぶん意味が変わってしまったことも多くあります。古いしきたりに縛られるというよりも、会社の上司や年配の方への贈り物や、大切な贈り物をするときに、相手に失礼のないように、正しい知識として身に付けておきましょう。
この記事のライター
sugahara michiaki
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