働き方改革で残業時間はどう変わる?変更点や抑えるべきポイントを解説
働き方改革で残業時間の計算で頭を悩ませている管理職も多いかと思います。残業時間が改正前と変わらず月45時間、年間360時間で削減されなかったのは嬉しいですが、規制が厳しくなったので辛いですよね。この記事では、働き方改革について詳しく解説しています。
目次
働き方改革とは?残業時間にも影響はある?
政府主導のもと働き方が見直されています。
そんな中、2018年に働き方改革関連法案が成立し、会社に対して時間外労働の規制を厳しくしました。
時間外労働とはいわゆる残業のことで、従業員の労務管理や業務の見直し、対策をしている管理職が多いです。
残業させることのできる時間が減ったことによって、労働環境の改善と従業員の意識を変える必要が出てきました。
仕事量は同じなのに労働時間が削減させられたからです。
削減された時間を補填するために、作業を効率化したりや従業員のモチベーションを高めたりして、時間内に行える作業を増やす取り組みが行われています。
会社によっては社長が休日出勤しているかもしれません。
残業時間は今までも上限がありましたが、法的な拘束力はありませんでした。
たとえば「原則として月に45時間、年間360時間以上の残業は認めませんよ。もし超えた場合は、罰則ではないけど行政指導しますね」という規制です。
2020年以前は、上限時間があってないようなものでした。
単純計算すると1日2時間です。
それを是正すべく登場したのが働き方改革関連法案。
月に45時間、年間360時間以内という労働時間は、改正前と改正後で同じなのですが大きく違う点が3つあります。
①特別な事情があっても最大で月に100時間以下、年に720時間以内の残業時間
②月45時間を超える時間外労働は6か月まで
③上限を超えた場合、罰則が適用される
違反した場合は事業主に、30万円以下の罰金または6か月以下の懲役となる可能性があります。
働き方改革の目的
目的を知らず働き方改革に取り組むのは、目的地が決まっていない旅行に出るようなものです。
もし目的地が決まっていないとしたら、それはあて所のない外出のようなもので、どこへ向かうべきか判然としないまま歩き続けることになります。
旅行も働き方改革も、上手く計算して行いたいものです。
長時間労働は悪影響なので改善しよう、というのが働き方改革の目的で、具体的には下記のような悪影響があります。
・健康を損なう
・仕事と家庭の両立ができない
・少子化の原因となっている
・女性がキャリア形成でしづらい
長時間労働を是正することによって、女性や高齢者も仕事に就きやすい社会を目指しています。
働きやすい労働環境を作り、労働参加率の向上や労働者数の増加で働き手が増え、生産性が向上することが最終目標です。
なので「働き方改革の一環で残業できないので早く帰りなさい」では意味がありません。
働き方改革の本来の目的を達成できるよう、新たなツールの導入や業務の外注を経営計画に入れるなどの行動が求められています。
経営者が目的を理解し、従業員と働き方改革についての認識を共有することで、新しい働き方に前向きに取り組むことができます。
所定時間外労働と法定時間外労働
時間外労働には2種類あります。
①所定時間外労働
②法定時間外労働
働き方改革関連法案の規制対象は法定時間外労働です。
所定時間外労働
所定時間外労働とは、会社ごとのルールによる残業のことです。
会社の就業規則で決められた所定時間をオーバーした場合、残業として扱われます。
たとえば就業規則で勤務時間が8時から17時となっている会社では、17時以降は所定時間外労働として残業代が支払われます。
法定時間外労働
法定時間外労働とは、法律で決められた労働時間をオーバーした残業のことです。
労働基準法によると1日8時間、週に40時間となっており、それを超えた場合は法定時間外労働として扱われます。
会社の就業規則は関係ありません。
働き方改革による残業時間の規制はすでに始まっている
働き方改革による残業時間の規制は、2019年4月から適用されています。
適用は企業の規模によって異なっており、大企業は2019年4月から。
中小企業は2020年4月から適用となっています。
中小企業の定義は職種ごとに異なり、資本金または従業員数のどちらかを満たすと中小企業に該当します。
下記の表のいずれかに当てはまれば中小企業です。
職種 | 資本金 | 従業員数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
建設業 | 3億円以下 | 300人以下 |
製造業 | 3億円以下 | 300人以下 |
働き方改革による残業時間の規制がない例外
医師や自動車運転業務、建設事業は、働き方改革による残業時間の規制のない例外です。
ただし、2024年まで猶予されるというだけの例外の業種です。
2024年以降、その例外の業種に適した規制が適用される見込みです。
残業時間の規制により起こりうる問題と対策
残業代が減れば人件費が減り支出が減ります。
支出が減れば儲けになるのかといえば必ずしもそうなりません。
残業時間の規制により起こりうる問題と対策について考えてみます。
残業時間の規制により起こりうる問題と対策①従業員の意欲低下
残業時間の規制により起こりうることのひとつに、従業員の意欲が低下するという問題が考えられます。
人それぞれ働く価値観はそれぞれです。
・マイホーム購入のため
・出世したい
・独立するのにこの会社で成長したい
・家族を養うため
・この会社で人脈を広げたい
従業員の数だけ、仕事に対する価値観があると言っても過言ではないでしょう。
会社で働いている理由は従業員一人ひとり千差万別ですが、一番多い理由は「お金」です。
もし生活費が足りないなんてことになったら「来月の自動車税が払えない…」とか「このままじゃ家のローンが払えなくなり手放さなくちゃ」ということで頭がいっぱいになってしまいます。
残業代が減りお金のことばかり考えてしまい、仕事に集中できなくなります。
お金の心配がない人でも、残業規制によりサービス残業や仕事の持ち帰りが増えると労働意欲が低下します。
仕事量そのままで給料が減ってしまうと、お金が働くモチベーションになっている人は削減されたことでやる気が出ません。
なので従業員のモチベーションを高める政策が必要になってきます。
残業時間の規制により起こりうる問題と対策②離職者が増える
残業時間の規制により起こりうるふたつめの問題は、離職者が増えるという点です。
残業代込みの給料でギリギリの生活をしている人が、会社を退職していくからです。
生活できるだけの給料が貰えないのであれば仕方ありません。
そうならないように、浮いた残業代を従業員へ支給する政策をしましょう。
たとえば時間内でより多く作業した人に特別手当支給など。
離職者を減らすためにも、浮いた残業代を還元できる新たな仕組みを導入する必要があります。
残業時間の規制により起こりうる問題と対策③管理職の仕事が増える
もし時間内に仕事が終わらなかったら、管理職自ら仕事の持ち帰りしたり休日出勤したりなどして仕事をかなさなくてはいけません。
働き方改革で納期が間に合いません、で納得してもらえないからです。
残業せず時間内に仕事を終わらすために、従業員を増員か従業員のマネジメントを行いましょう。
従業員の増員は資金繰りが苦しくなるので、現実的なのは従業員のマネジメントです。
従業員を育成できると、時間内で終わる作業が増え生産性が上がります。
また短時間とはいえ集中することで効率的に仕事を処理することができます。
そうなれば休日出勤せずとも、作業を終わることができます。
働き方改革による残業時間の規制まとめ
月に45時間、年間360時間の残業は、単純計算すると1日2時間です。
長期労働では生産性が下がります。
また仕事の持ち帰りしたり、休日出勤したりする会社の生産性も下がります。
かといって仕事はこなさなくてはいけません。
歴史を紐解くと、制約がイノベーションを生むことが多々あります。
労働時間は短く、かつ生産性が高い会社目指して頑張ってみてください。
この記事のライター
松田佳祐
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